事業所給食 企業のリストラで喫食率低下 新規の獲得と全方位マーケ戦略
一口に給食事業といっても、オフィス、工場、学校、官公庁、病院、保養所、福祉施設とさまざまな形態があり、一つにはくくれない。
しかし、この市場規模は事業所給食二兆〇八八三億円、病院給食一兆二八三六億円、学校給食五〇五七億円、社会福祉給食一七四九億円(平成5年度、外食総研推計)で、集団給食としてのカテゴリーでは計四兆円強の市場規模にある。
これは外食産業全体のマーケット(二八兆円)の一四%を占めるボリュームで、「食堂・レストラン」や「料亭・バー」に次ぐ市場規模だ。
オフィスや工場などに入居する事業所給食(社員食堂)は、一般客も利用できる“オープンマーケット”の運営形態が多いので、それだけビジネスチャンスを広げることができる。
事業所給食は集団給食の中でも大きなマーケットを占めるが、しかし、これは業種や企業規模(社員数)、立地条件などによって喫食率が変わってくるので、経営を安定させるためには、喫食率を高める工夫が最大のポイントだ。
事業所給食といえば、昼食ニーズに対応した運営形態がほとんどだが、最近は昼食の喫食率を高める工夫のほか、夜はビアレストランやパブに変身するというように、昼夜“二毛作経営”を導入するところが増えてきている。
ソデックスケータリング(株)(本社=東京・新宿)は、平成5年10月、東京銀行グループの綜合食品五〇%、三菱商事二五・一%、仏最大の給食会社ソデックス二四・九%の三社が共同出資で発足したケータリング企業だが、今後の市場戦略としては、モノパターンの給食事業にとらわれず、広角度のレストランサービスを展開していく方針だ。
九五年度から現在の組織運営や施設の運営、メニューづくり、コストコントロールなどをトータル的に見直して、ケータリングサービスの強化充実を図る一方、一般客対応の業態開発とも積極的に取り組んでいく。
また、クライアントや施設の利用動向によっては二毛作の運営形態も増していきたい考え。
現在、このスタイルの施設は契約件数九〇のうち二施設にすぎないが、新年度からは場所によって可能性があれば、昼夜の運営によって集客力を高めていきたいとしている。
「固定化された単なる給食事業では業容を拡大していくことは難しいので、レストランビジネス全般と取り組んでいくという考え方で、市場を創造していく方針でおります。フランスのソデックス社は本国ほか世界四〇ヵ国で多様なケータリング事業を展開しておりますが、このノウハウを生かして、日本国内でもいろんなスタイルの施設を展開していきたいと考えております」(ソデックスケータリング(株)常務取締役新浪剛氏)
シダックス(株)(本社=東京・新宿)は、九三年度売上高四三七億円(前年比四・五%増)、首都圏を中心に全国に一九〇〇店近くを出店する日本最大のケータリング企業で、一日平均三七万食を提供する。
この対象マーケットはオフィス、工場などの事業所をはじめ、学校、病院、保養所などだが、主力の事業所給食(全体比八割)が企業のリストラや残業の廃止などにより喫食率が低下してきているので、これにどう対応していくかが大きな課題だ。
「バブルがハジけて日本の産業構造が大きく変化してきているわけですから、既存施設については打つ手がないという感じです。基本的な市場戦略としては、新規施設を開拓するということにつきると思うのですが、当社の方針としましてはあくまでもケータリング事業を堅持し拡大していくということです」(シダックス広報室長曽根原龍介氏)
給食は単身赴任の企業役員から一〇〇〇~二〇〇〇人クラスの事業所や学校まで、まだまだ新規契約(出店)の可能性はあるとみている。
また、従来の方針どおりに都市の大型複合ビルについては直営方式で、昼夜両面の運営形態で収益力を高めていくことも考えている。
新宿の住友三角ビル、三井、NSビル、池袋サンシャイン60などはその代表的施設だ。
(株)メフォス(本社=東京・千代田区)は北海道から九州まで一三〇〇ヵ所、一日平均二〇万食以上を提供している。対象マーケットは事業所、病院、老人ホーム、学校などで、九三年度は売上高二五〇億円(前年比一〇%増)を達成している。
主力部門は事業所、病院の二分野で、このウエートは事業所六割、病院三割。九四年度売上げも一〇%前後の伸びを見込んでいるが、事業所給食は企業のリストラで喫食率が低下してきているので、今後の考え方としては新規出店に加え、病院や福祉施設にウエートをかけてマーケティングを積極化していく方針だ。