アポなし!新業態チェック(123)「本と珈琲 梟書茶房」

2017.11.06 465号 12面

 ●ドトールコーヒーの大型店新業態 約100坪の店内に3000冊の書籍配置

 ドトールコーヒーはこの6月、東京・池袋の商業施設に新業態「本と珈琲 梟書茶房」を出店した。同店は「喫茶店の中で思いがけない本との出合いや読書の時間」を楽しんでもらうというコンセプトで、神楽坂のユニークな書店「かもめブックス」の代表である柳下恭平氏とコラボした、「本と珈琲の新しいブランド」という位置づけだ。

 建物4階フロアの大部分を占める約100坪という店内は、「珈琲と食事を楽しむ」「読書と珈琲を楽しむ」など大きく四つのゾーンに分かれる。それぞれのゾーンはレイアウトや家具が全く異なり、来店客の用途によって使い分けできる設計。店内には約3000冊の書籍が揃えられ、そのうちの約2000冊は店内で販売される。書籍は全て、「新たな本との出合い」というテーマで柳下氏が選んだものだ。販売する書籍は全て同店オリジナルのブックカバーによって袋とじされており、中を見ることができない。カバーに書かれた紹介文から想像を膨らませて、購入するかどうかを決めるという「シークレットブック」なのだ。

 メニューには、同店オリジナルのコーヒー「梟ブレンド」(500円・税抜き)や「抹茶ラテ」(700円)「フルーツティー」(800円)、フードには「プレーンドッグ」(480円)や「シフォンケーキ」(500円~)の他、パスタやパンケーキなどが用意されている。「梟ブレンド」は、同社の取締役であり日本スペシャルティコーヒー協会副会長でもある菅野眞博氏が開発したもので、オーダーを受けてからサイフォンで一杯ずつ提供する。同社としては久々の画期的な大型新業態となった。

 ★けんじの評価:有名書店とコラボしたユニーク企画

 池袋駅は、JR線、私鉄の西武と東武、そして地下鉄3線が乗り入れる巨大な駅だ。特に同店のある西口の地下通路は、店舗を配した地下街と近隣の商業ビルなどが一体となった一大商業ゾーンとなっている。同店が入居している「Esola池袋」も、地下鉄の東京メトロの子会社が運営する商業施設の一つだ。

 同店の店名は「ふくろうしょさぼう」と読む。池袋はその名にちなんで梟(ふくろう)を街のマスコットとしており、それに「袋とじ」をかけたのが店名の由来。「かもめブックス」と同様に鳥の名前を冠した店名と三つの意味があるようだ。

 これまでドトールコーヒーは、あまり奇抜な新業態には積極的でなかったように思う。あくまでも飲食業としてオーソドックスな業態が中心であったし、コンセプトの斬新さを売りにするよりも、メニュー商品の個性や満足度を大切にしてきた企業だった。日本レストランシステムとの経営統合後、そうした同社の姿勢にやや変化が生まれたように感じる。この店はどことなくメニュー商品の影が薄い。公式サイトのメニュー紹介もごくわずかだ。斬新なコンセプトが売り物なのだろう。

 筆者は買っても読む暇のない本がいわゆる「積ん読」状態のまま多数放置されているという人間なので、これ以上に“本との出合い”を促されるのは勘弁してほしいと思ってしまうのだが、もちろん世の中にはそうでない人の方が多いに違いない。同店がどの程度多くの人々に支持されるのかは分からないが、コンセプターの自己満足に終わらないような空間として、長く存在し続ける飲食店であってほしいと願う。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「本と珈琲 梟書茶房」

 開業=2017年6月30日/所在地=東京都豊島区西池袋1─12─1 Esola池袋4階

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