飲食トレンド 女性調理人、女人禁制 今は未来の和食調理長
女性騎手、女流棋士、女性消防士はたまた女性管制官など、今まで男社会といわれた職域に女性がどんどん進出している。女人禁制の男の聖域だった厨房にも、遅ればせながら女性調理人が、進出してきた。昨年末には、女性調理人の会「エル・アーバン」が発足するなど、まだ緒についたばかりだが、未知の世界に夢を馳せる女性調理人の活躍が期待されている。
バブル期には引く手あまただったという調理人も、今は当時ほどの隆盛は見られないが、小さなピークを迎えているという。
トレンディドラマでホテルが取り上げられると、ホテルマン志望者が増え、今“料理の鉄人”が注目を浴び、調理人志望者がぐっと増えるご時勢。
全国に専門学校が二五八校あるが、全体的に三割増の応募者という。女性の応募者も年々増え、服部栄養専門学校では二割が女生徒。
「調理人ばかりでなく、栄養士、ソムリエ、テーブルコーディネーターなど、女性の感性を生かした“食”まわりの仕事が広がっている。厨房への女性進出も多くなったが、環境問題や機械化が進めば、もっと増えるだろう。いずれは、“三分の一女性調理人”の時代が来るでしょう」(服部校長)
江戸時代創業の割烹「なだ万」は、厳しい職人の世界である厨房に、四年前から女性調理人を入れた。
洋食業界では女性調理人も珍しくはなかったが、和食での女性調理人は“前代未聞”と、積極的ではなかった木浦調理長。
「初めてなので戸惑いもあり、妙に男女別々の指導をしていたが、逆に同じにしてくれとの要求があり、今では、まったく同じメニューをこなさせています」(木浦調理長)
調理は技術の世界。まだスタートして四年。
「技術は四、五年までは横並び。その後は個人差。女性採用も一〇年タームで見て行きたい」(橋本常務取締役)とする。
「夢として女性調理長が出現して欲しい」(木浦氏)と指導にあたるが、適齢期には結婚・出産という大きな壁を乗り越えなければならない。
個人の意志だけでは乗り越えられないハードルを、職場、業界また社会がどうバックアップしていくかが鍵となりそうだ。
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