ラーメン特集 地域ルポ「佐野らーめん会」厄除け参りしのぐ人気

1995.04.03 73号 12面

佐野厄除け大師として知られる佐野市に、また新しい“佐野の顔”として登場、福島県喜多方ラーメンと並び注目されているのが佐野らーめん。

この地方一帯が一大小麦産地であったこと、また、市の水道水として使われており、日本名水百選の一つに数えられる弁天池の湧水が豊富に得られることから、粉食文化を栄えさせていた。

佐野には「佐野ちぢみ」が織物産業として全盛を極めていたが、主婦が職工である家庭では、ラーメンの出前を大いに利用していたというほど、ラーメンとの関わりは深かった。昭和初期で、既に一六〇軒に近いラーメン店があったという。

昭和63年、ゴルフ客のクチコミから評判を広めたのをきっかけに、町おこしの一環として「佐野らーめん会」が発足した。市の二二〇軒にのぼるラーメン店と市観光協会、商工会議所、商工連合会が協賛してのスタートだ。

発足当初からテレビ、雑誌などマスコミに取り上げられたり、市の協力を得てラーメン祭り、ラーメン仲良し会などのイベント参加を積極的に働きかけることで、全国的にその名が知られるようになった。

正月にラーメンお座敷列車を運行したり、厄除けラーメンを大師前で売出すなど、多彩なイベントも独自に打ち出し、好評を得ているという。

また、阪神大震災では市の要請で、八〇〇〇食のラーメンを携え関係者二四人が現地に行き、炊き出し奉仕をするなどの活動もしている。

市が三六〇〇人の観光客を対象に行ったアンケート調査によると、佐野市に来る目的の第一位は、ラーメンを食べに来るで六五%、厄除け一〇%、その他二五%という結果を得た。

「今やラーメン客が厄除け参り客を上回り、年間を通して人が来るようになった」(川田潤佐野らーめん会会長)

これだけ知名度を上げただけに、会のよりいっそうの結束が求められる。月一回は、理事会を開催し、今後の方向付けを検討し合う。

「味、品質、サービスの向上などに努め、東京から車で一時間という地の利を生かし、東京ではできない佐野の味を守っていきたい」とする。

会が発足して七年。佐野の職人気質から味や素材にこだわり、一店一店の味が違うのが特徴といわれる佐野らーめん。町おこしとして一丸となり、どこまで突き進めるか注目されるところである。

佐野ラーメンの見ものといえば「青竹打ち」だ。中国から伝来したというこの技法は、かつて各地でも見られたが、いまや機械打ちが主流で、そのなごりは佐野ラーメンでしか見ることが出来ない。佐野にあっても正統に技法を受け継ぐ店舗は、わずか一五軒ほどという。青竹打ちの効果はコシの強さに表れる。麺を打つ圧力は手打ちや機械打ちの約一〇倍。不規則に圧力を加えて小麦のグルテンをバラバラの方向に広げるためだ。青竹打ち一筋二五年。正統の流派を継承する「広来軒」のご主人に実演していただいた。

海をモチーフにしたラーメンが盛りだくさん。鍋のコンセプトをラーメンに乗せるのが狙いだという。ボリュームがありながらも女性客が七割を占める。高価な食材を惜しげもなく投じるのがご主人のモットー。おいしさの追求には貧欲だ。佐野で一番珍しいメニューが多い店としても知られる。

◆植野一九二三、Tel0283・23・1157、午前11時30分~午後9時、毎週木曜定休

カレーとラーメン。大衆食として根強いこの両雄を上手にミックスした技術は、もと洋食屋を営まれた同店ならではのもの。一度食べたらやみつきになり、県外から通う常連客も多い。和・洋・中となんでもこなす同店には、ほかにもユニークなメニューがあふれている。

◆若松町五二六番地、Tel0283・22・1335、午前11時~午後10時、毎週月曜定休

自分が食べておいしいことが第一条件。毎日食べても飽きない庶民の味を追求するご主人の持論である。わずか六品に絞り込まれたメニューにはそのこだわりが凝縮されている。味は東京ラーメンに近い。スープは豚がら、鶏がらに煮干しとだし昆布、加えて野菜を数種、開店前の五時間煮込み続ける。TVや雑誌で有名になったいまも、当初の姿勢に変わりはない。

◆奈良渕町三一七‐六、Tel0283・24・2785、午前11時30分~午後3時、午後4時30分~8時、毎週火曜、第三月曜定休

豚骨と鶏がらを一度ゆでてから改めてスープを取るために煮る。手間な分は明らかに味の差となってあらわれる。青竹打ちの歯ごたえの良い麺とのマッチングも必見の価値あり。ラーメン一筋二五年のご主人自信の一品だ。

◆植上町一三一〇、Tel0283・22・3444、午前11時~午後9時、毎週月曜定休

シンプルイズベスト。地元に愛されるラーメンは決まっている。同店も例外ではない。寒い季節になるとコタツが登場するのも地域に根ざしたサービスのひとつ。酒でもやりながらのんびり過ごしてください、というご主人の気配りからだ。

◆富岡三二七‐一、Tel0283・24・8775、午後8時~午前4時、毎週木曜定休

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