メニュートレンド:海鮮丼の新たな“映え”提案 「パフェみたいな生本マグロ丼」
SNS集客を狙った“映え”ブームは、今や品質本位の海鮮居酒屋にも影響を与えはじめている。そうした傾向でよく目にするのがラーメン二郎を彷彿とさせる刺身のエベレスト盛りだが、東京・高田馬場にある「米と魚 酒造 米家ル」の「パフェみたいな生本マグロ丼」は、芸術的なアイデアで店のランクを一段高めている。
●美しさとおいしさで二度ウットリ 希少な生本マグロをぜいたくに
もともとは夏期の売上げが伸び悩んでいたことから集客の目玉となる商品として開発。「夏の商品ということで、かき氷をイメージした海鮮丼がウケルのでは、なんて気軽な気持ちでスタートしました」と関口肇店長は笑う。いざ試作をしてみると、かき氷というよりパフェにビジュアルが近かったことからコンセプト変更となったが、どちらにせよ「海鮮丼」からはほど遠い見た目で、女性客を中心に高い支持をガッチリ獲得。インスタグラムなどのSNSで拡散されて集客力アップにつながった。
見た目だけでなく、商品力もずばぬけている。使用するマグロは長崎県産の“生”の本マグロ。一般的なマグロは遠洋で漁獲されるため、取れたら即急速冷凍される。冷凍されたマグロは細胞が傷ついて解凍時にうま味が逃げてしまう。その点、同店で使用する生本マグロは、漁獲後一度も冷凍せずに届いたもの。希少性の高さはもちろんだが、盛り付けられた刺身の色艶は文字通り宝石のような輝きで、濃厚なうま味となめらかな食感はまさに至福の味わいだ。
酢飯には細かく刻んだミョウガ、大葉、甘酢ショウガ、そして白ごまをあえて、本マグロのすき身をのせる。これを“土手”代わりにして赤身、中トロ、大トロを3切れずつ計90gを盛り付けていくが、刺身の中央部が盛り上がるように、丸みをもたせながらすき身の土手で固定させるのが美しさのポイントだ。刺身は、身のうま味が濃厚な赤身は厚め、とろけるうま味のトロは薄めといった具合に切り方を変えておいしさを最大化している。さらには頂点に生ウニがトッピングされ、仕上げにイクラがこぼれるばかりにかけられる。
同品は2018年夏にメニュー化されたが、好評を受けて19年夏から「雲丹ソースで味わう桜鯛丼」と「アボカドソースと生サーモン丼」(各1680円)の2品を加えてラインアップを強化。「高田馬場というと学生街、オフィス街というイメージですが、週末は意外と子連れファミリーの利用が多いんです。お子さまの好物であるサーモンを注文しやすい価格で提供することで、さらなる認知度アップを目指したい」と関口店長は意気込む。
●店舗情報
「米と魚 酒造 米家ル 高田馬場店」 経営=Globrige/店舗所在地=東京都新宿区高田馬場2-18-11 稲門ビル3階/開業=2016年10月/坪数・席数=51坪・99席/営業時間=17時~23時30分(土・日曜12時~)。年末年始休/平均客単価=4000円/1日平均集客数=200人
●愛用資材・食材
「甘口さしみ醤油」 ヤマエ食品工業(宮崎県都城市)
マグロと好相性の甘味
看板商品である長崎県産生本マグロの刺身との相性を追求し、同じ九州産を採用。「醤油を変えてから刺身がおいしいというお客さまの声が増えました」と関口店長は喜ぶ。南九州独特の濃厚なうま味、甘味が都内の客には個性的な味わいとして受け入れられた形だ。
規格=1.8L