アサヒグループ食品、社員の心をケア オンライン雑談カフェを実施
厚生労働省自殺対策推進室が5月12日発表した自殺者統計によると、20年4月の自殺者は、1455人で前年同期比で約20%減少し、過去5年間で最も大きな減少幅だった。職場や学校に行く機会が減り、人間関係の悩みが少なくなったことが要因との指摘がある。在宅勤務の孤独感による「テレワークうつ」も注目を集める。
社会のあり方を変え、働き方を変えた、コロナ禍は人々の心身に大きな影響を与えている。こうした中、アサヒグループ食品のオンラインを活用した社員同士をつなぐコミュニケーションの取組み「オンライン雑談カフェ」が注目を集めている。
同社は、社内風土を醸成する施策として、社内交流会「全社横断カフェ」を15年11月から継続実施している。同社は、同年7月にグループ傘下にあったアサヒフードアンドヘルスケア、和光堂、天野実業が一つになり誕生。17年7月には旧3社の製造部門も吸収し、完全統合。異なる3社の多様性理解と社内融合のため、主体性と創造性を高める対話の手法であるワールド・カフェ形式の全社横断的な対話型の交流会「全社横断カフェ」定期開催し組織の一体感を図った。
コロナ禍の中にある現在、在宅勤務社員、交代出社の事務社員、さまざまな制約の中で勤務する製造現場社員など、会社の中で物理的な分断が起こっている。この分断は、社員の心理的な不安や業務モチベーション低減につながる可能性があり、ソーシャルディスタンスを取りながら、心は近づける施策として「全社横断カフェ」を「オンライン雑談カフェ」として進化させ、社員の心のケアにつなげる。テーマは「コロナ禍で苦労している事」「在宅勤務の良いところ・悪いところ」「アフターコロナの生活はどうなるか」などでこれまで3回開催し、全7回を予定する。
「オンライン雑談カフェ」を担当する企画本部経営企画部の石渡寛基氏は、こうした状況だからこそ「社員と社員」「社員と会社」をつなぐ必要があると考え、当社としては「初」の「オンライン雑談カフェ」を役員も参加する形で開催したと説明した上で、「参加者には雑談する機会を楽しんでもらえた」と語る。実際、参加者同士は「久しぶり」や「元気」などの声を掛け合ったという。さらに「会場までの移動がなく、さまざまな部署の人と交流ができた(研究・20代女性)」など物理的な分断がメリットになった声もあったという。現在はオンラインが対応できるパソコン端末の展開拠点限定だが、今後は、パソコン端末の展開を計画し、より多くの社員が参加できるカフェの開催を目指す。(青柳英明)