味の素社、認知機能低下リスクを食生活改善などで低減 100億円事業構想
味の素社は、認知機能の低下リスクを低減する個々人向けの新サービスを100億円規模の事業として構想する。食事や生活習慣をチェック、リスクを評価した上で食事のメニューや運動、睡眠の改善をアドバイス、栄養・加工食品やサプリメントの摂取などを提案するもの。1回の採血で3大疾病のリスクをチェックできる検査「アミノインデックスリスクスクリーニング(AIRS)」で、生活習慣病リスクの新たな検査項目として「AILS(認知機能低下)」を加えて10月27日に、サービスを開始したことに伴い西井孝明社長が明らかにした。(川崎博之)
同日開いた記者説明会で西井社長は「IoT(モノのインターネット)、デジタル技術を駆使して生活者に栄養や健康上の気づきを与え、個々人の特性に合わせて確かな情報に基づくソリューションをワンストップで提供していく。100億円規模の認知機能に関わるアミノ酸バランス改善のパーソナライズ事業へと育成していくプラン」と語った。その中では「食生活を改善するためのアミノ酸が発見されるだろうということを前提に、それを商品化することも考えている」という。また、食を活用するという切り口でソリューションを提供し、アミノインデックスのソリューションを受ける個々人とデジタルツールを使ってつなぐビジネスも可能とみている。
AIRSの生活習慣病リスクの検査項目「アミノインデックス生活習慣病リスクスクリーニング(AILS)」は、今回加わった「AILS(認知機能低下)」のほかに「AILS(脳心疾患リスク)」「AILS(糖尿病リスク)」「AILS(アミノ酸レベル)」で構成する。AIRSにはAILSのほか「アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS)」がある。
記者説明会には「AILS(認知機能低下)」の開発を共同研究で支えた新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター遺伝子機能解析学分野の池内健教授、東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームの北村明彦研究部長を招いた。
同共同研究は「MCIコホート研究」と呼ばれるもの。池内教授を研究責任者とし新潟大学と味の素社が全国13の大学・医療機関の協力に基づき約700人の臨床研究データを収集してデータ240例から採血時点での軽度認知障害(MCI)の判別、年間約5~15%の発症率とされるMCIからの認知症発症の発症前血中アミノ酸測定による予測をそれぞれ検討している。
池内教授は、同共同研究で得た知見から、認知症に至っていないMCIと診断されている人は、体内で合成されず食事から摂取する必要がある必須アミノ酸の血中濃度が低く、タンパク質摂取不足などの栄養面に変化が生じている可能性が考えられたとした。その上で、アミノ酸バランスなど栄養という新しい観点から認知機能低下の早期発見や進行抑制に取り組む意義が示唆されたとした。
北村研究部長は、認知症の危険因子は生活習慣と密接に結び付いているとして、認知機能の維持に効果のある生活習慣は、運動、栄養バランスの取れた食事、タンパク質の摂取、良好な睡眠などが報告されていることを紹介した。