しのび寄る空中浮遊菌 その種類と防除策
「空中浮遊菌がなければ、一週間持つ弁当を作れ、食品のロスが少なくなる」と東京都食品保健課は指摘する。空中浮遊菌の防除は経費削減にもつながるのである。では、空中浮遊菌とはどんなもので、どのような対策が必要なのかを紹介する。
都内で六、七年前に、弁当業者の弁当を食べて、数十人が食中毒をおこし、嘔吐と腹痛で苦しんだことがあった。原因はバチルス・セレウス、グラム陽性かん菌の一種であった。「炊き立てのご飯を強制冷却する際、装置が引きこんだ外気を経由して、この菌がご飯に付着した珍しいケースだ」(東京都新宿保健所)と分析された。
空中浮遊菌の種類は次の二つである。
(1)クロカワカビ/このクロカビはアルミニウム性食品包装材料まで侵し、薬剤抵抗性が強い。
(2)アスペルギルス・フラプス/強力な菌である。食品工場や病院では最も注意をしている。
これらの空中浮遊菌はどこから来るのか? かびの繁殖する際の栄養分と水はどこにあるかというと壁や天井の建材にある。木材・合板などの木質系材料、石こうボードやビニールクロス、接着剤、塗料、タイル目地、繊維壁、畳、中性モルタル、コンクリートなどは栄養物質が豊富だ。
対策としては次の二つがあげられる。
(1)「天井や壁の掃除はこまめにやること。雑巾で拭き取る場合は雑巾にカビが付着していないか。逆にかびを繁殖させぬように注意をすること」(新宿保健所)。市販の除菌剤やかび取り剤を使用する時は、薬剤のにおいが残りやすいので、濃度、使用後の換気に注意すること。あるパン屋で、かびで汚れた壁を塗料に有効な防菌剤を使用したところ、ほとんど汚れがみられなくなり、一年に一、二回塗布するだけでかびの発生はないとか。防菌処理した建材は有効である。
(2)水分を取り除く作業も大切である。東京都食品環境指導センターは「レストランなどの厨房対策では、換気扇を使用するなどして、温度を下げてほしい」(業務部普通啓発課)と指導している。ビル内に出店する場合、吸気、排気設備に対して注意が必要だ。「きれいな外気を吸いこむ努力が必要で、外気が汚れている場合は、フィルターで空中浮遊物質を除去する方法が肝心」とも。
東京都は「換気する場合、店内客室を陽圧、厨房内を陰圧に保ち、客席から厨房へ自然に空気が流れるようにすることが基本」(食品保健課)という。
また、吸排気に詳しいダイキン工業(株)は「吸気が汚れている場合が多く、外気処理するケースが多い。繊維などを使ったフィルター殺菌方式と、帯電処理による電気集じん方式がある。また客室のたばこの煙やほこりなどを取り除くために空気清浄器の利用も有効だ」(汎用空調部)と話す。
特に「厨房での換気は排気が中心である。調理の熱で暑く、働く環境が悪いまま作業しているのが現状」(同)という。