総点検-激震下の外食・飲食業 ハンバーガー準大手、中堅3社の強力商品

1996.02.05 94号 4面

「ハンバーガー業界の九五年度は低価格のマクドナルドが一人勝ち、九六年度はマクドナルドの正念場」と分析するのは明治サンテオレ(株)黒川孝男社長。二年目を迎える低価格に減速が起きないかという点と、ガリバーの低価格にモスフードサービスの「体に良くておいしいもの」に代表されるように他社はそれぞれ品質重視作戦で生き残りをかけ、これまで以上に知恵を絞った良品で独自性を打ち出し成果を上げている。しかし、マクドナルドは今年創業二五周年を迎え、1月8日から二〇日間、創業価格プロモーションの八〇円バーガー、一〇〇円チーズバーガーで年初から先制攻撃。1月14日には売上げ一四億八九〇〇万円で一日の売上げレコードを更新、客数は四四〇万人にのぼった。期間中の客数は昨年同時期と比べて五〇%増、総売上げ個数は一〇倍の五〇〇〇万個を超える見込み(1月16日現在)。果たしてガリバーの一人勝ちに九六年はストップをかけることができるのか、そのキーワードを握る準大手、中堅三社の動向と強力商品を紹介する。

(株)ロッテリアは1月16日からバーガー新革命と銘打ってグリルバーガー(プレーン二一〇円、チーズ二四〇円、てりやき二九〇円、ダブルてりやき三六〇円)を新発売した。従来のハンバーガーは販売終了でビーフ系はこのグリルバーガーに絞り込む。

同社は九五年1月からビーフパティの品質見直しを開始。これまでに(1)指定牧場で産地にこだわる(オーストラリアのワイアラとロックデールに牧場を指定。品質管理、チェックを確実なものにした)(2)穀物肥育(牧草のみの牛肉は脂肪が片寄り硬くて風味に乏しいため、トウモロコシ、大麦、小麦のブレンドにした)(3)使用部位をシルバーサイド(もも部分)とそれと相性のいいブリスケット(胸部分)のブレンドで柔らかさの中にも歯ごたえある触感(4)低温熟成輸送(牛肉は真空パックのチルド状態で日本に直送。輸送中にアミノ酸の働きで肉の風味が増す。国内でパティに形成して店舗には冷凍配達。従来の冷凍輸入、解凍、整形、冷凍のツーフローズンをワンフローズンにした)。

これに加え新規に開発されたのが(5)凹凸のパティ。クイックサーブでもっともおいしい焼き上がりを実現するために肉汁やうまみ成分を逃さない形を開発。二ミリメートルの凹凸をつけた。

加えて、バンズ、パティの味の相関関係からパティの重量を六〇gと二五%増量。ボリュームも増した。プレーンとチーズにレタスも使用を始めている。

このような特徴を持つグリルバーガーを同社は今年のこだわりとして前面に押し出し、「バーガー全体のバランス・風味・ボリューム感」で勝負をかけ、一気に巻き返しを図る。自信の裏付けにはパティのうまみ成分である遊離アミノ酸十数項目の分析で一般的ハンバーガーより物によっては数値が一〇倍近くあったという検査結果と消費者のブラインド調査で七、八割がグリルバーガーをおいしいとあげた調査結果がある。

同社の九五年度売上げは六七三億二〇〇〇万円で着地予定。対前年比一〇二%となる。店舗数は五七九店舗で横ばい。

マーケティングの機軸を価格から商品に移し二年になる。九五年は一五企画、一二商品の新商品・リニューアル商品を打った。「いかにおいしい商品にするか」が商品コンセプト。従来と同じようなFFの仕組みの中からの商品ではなく、なにかもっと手を加える必要性にトライ、成功したのがフランスパンにクラムチャウダーが入っているスープパン二九〇円である。

「レストランでやっていることもFFでできるのではないか」という発想の商品である。パンはそのままの形で納入、店舗でふたを切って中をくり抜いて器を形成している。すべてスタッフの手作業。発売ぎりぎりまで手がかかりすぎるので売り方をアイドルタイムのみの商品にしようか、個数限定にしようかなどなど現場が混乱しない方法を模索したが高原洋社長の「中途半端な売り方をするならやめてしまえ」の一言で通常商品と同じ扱いとなった。西新宿店では一日八〇〇個売れる。

ほかにもタンドリーチキンバーガーやステーキバーガーなどヒット商品が続々と生まれ、同社は新商品投入にかなり自信をつけている。「これら連続した新商品投入とキャンペーンは直営主体だから即決、実行できること」(中西卓也取締役)と分析、オリジナルな味の主張を新商品投入の連続性で定着させつつある。

九五年度の売上げは一〇四億円。対前年比一〇三・一%増、既存店比で約一〇二%。二年連続で増収増益を果たした。店舗数は八六店舗、四店舗増。

ポテトにママレード、メイプルシロップなどを提案したソースバーや今年から本格展開する一杯入れコーヒーなど見直し・提案できるところから随時実行することにも注力している。一杯入れコーヒーは注文を受けてから豆を挽いて抽出するもので実験店では切り替えでコーヒー売上げが三~四割増えておいしいという声と同時に飲み残しが急激に減った。

もちろん、価格は据え置きで、一杯ずつなのでロスがないというおまけまでついた。同店は都心のビジネス立地店が多く、ドリンク対フードの売上げが三対七と比較的喫茶需要が多く、朝は四~五割が喫茶利用。コーヒー回数券での固定客獲得も奏功している。

九六年度は首都圏、関西、京阪に一〇店舗以上の出店を計画。九四年度一万三〇〇〇人、九五年度五万人のファーストメンバーズ(会員制度)でのサポーターをさらに拡大する。同会員の全売上高に占める利用割合は五%にのぼる。

昨年10月に国産有機栽培キャベツとレタス、鹿児島産薩摩豚をメニューに取り入れた「日本農業との共生」商品が好調だ。企業アイデンティティーを強く打ち出した第一弾はヒレカツバーガー二九〇円(鹿児島薩摩豚使用)、ダブルテリヤキバーガー二九〇円(四五gパティを二枚重ねた和風感覚のボリュームあるバーガー)、十勝コーンポタージュスープ二〇〇円(北海道の十勝産トウモロコシを使ったストレートタイプのスープ)、グリーンサラダ、海草サラダ各二〇〇円(健康志向をキーワードにハンバーガーと一緒にすすめたい一品)。

ヒレカツバーガーが特に好調で全売上げの一三~一四%を占めるオバケ商品になっている。セットに限らず、単品でもよく売れており、「商品力を認めてもらった」(黒川社長)。コーンポタージュも旧商品に比べて五割増しとなっている。

この新規打ち出しを10月から12月にかけての全チェーン拡販コンクールで推進した。売上げコスト、売上高構成比、売上高前年比、店内装飾の創意工夫などをポイントで評価、上位を表彰するというもので、チェーン結成以来初めての試み。販売拡大に大きく貢献したことはもちろん、各店舗意欲的に参加してチェーン活性化にも大きく貢献した。

売上げは既存店ベース対前年比で9月までは九八%で推移していたが10月以降は一〇二%、通年では一〇〇%強で着地。総売上高では一〇五%増となった。店舗数も念願の一〇〇店舗を突破し、九六年度も一八店舗の出店を行う。

今年1月1日からDAN DANセットにサラダを一〇〇円で提供し年初売上げに弾みをつけている。「昨年、一昨年は天候が良く、各社売上げが過去最高のはず。九六年は普通の天候といわれているので、どうなるか」(黒川社長)と分析するものの、経済の底打ち感はあり明るい兆しに期待したいとする。

同社がもう一つ注力しているのが独占一括提案のフードコート「メイポート」である。昨年10月に群馬県藤岡市に初出店、ハンバーガー、ジェラード、ラーメン・天丼、焼物の四コーナーからなり、目標月商一〇〇〇万円が可能となっている。

ハンバーガー店では一店舗あたり月商四〇〇~五〇〇万円で個人経営には向いていたが企業経営には不向き。今後、零細な中小企業の事業転換に提案していきたい意向。

ここにきてハンバーガー各社が会社の規模と方針に沿った戦略が鮮明になり、企業カラーが出た分消費者にとっては選択肢が広がり喜ばしいことと受け取っている。当協会は昭和49年からハンバーガーショップがパティを食肉の格付け検査に合格した物を使用していること、店舗の衛生管理が行き届いていると認めた優良店だけに「ハンバーガー販売指定店」の看板を出している。昨年末現在で三五七〇店舗、前年より一〇〇店舗強増えている。今後も「安心して食べられる」ことに最善の注意を払っていただきたい。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら