サッポロビール、節税酒「ドラフティー」発売で発泡酒に参入へ

サッポロビール(株)(東京都渋谷区、03・5423・7204)は、麦芽二五%未満使用の発泡酒「ドラフティー」二品種を20日から関東地区で、6月中には全国で新発売する。国産発泡酒の販売はサントリーの「ホップス」が先行し、好調。価格は三五〇ミリリットル缶で「ドラフティー」は「ホップス」より二〇円安い一六〇円で参入することになった。

低率の酒税が適用される発泡酒は、ビールの製造方法と基本は同じ。酒税が低い分、低価格で販売できる。今年のビール市場はサッポロ、サントリー両社の販売競争と、関税がビール並みの扱いをされるとあって海外ブランドの輸入が急増するとみられることから「発泡酒」という新ジャンルが形成されそうだ。

「“うまくて、安い”発泡酒〈ドラフティー〉の商品開発には五年の歳月と、一〇〇種以上の試験醸造をしてきた」(岡商品企画部長)という自信作。

製造工程の原理はビールと同様だが、麦芽の使用率の低い(麦芽使用率二五%未満)発泡酒で、ビールファンに満足のいく味を追求している。原材料は、麦芽、ホップ、コメ、コーンスターチを使用しているが、「麦芽の少ない分、コメを多く使用している」(同)。「うまみ」「爽快感」「ノドごし」といったビール通も納得する味わいを実現するために、仕込みや発酵の段階でていねいに手間をかけているため、ビールより製造原価は高い、という。アルコール度数は約五%。

低価格にするため、缶やダンボールなどの原材料のコストダウンを図っている。

希望小売価格は、缶三五〇ミリリットル一缶一六〇円(一ケース三八四〇円)、缶五〇〇ミリリットル一缶二一〇円(一ケース五〇四〇円)。

発売地区は20日から東京、埼玉、千葉、神奈川、栃木、群馬、茨城、福島県いわき市となるが、順次全国に拡大していく。

大びん換算で五〇〇万ケース、三五〇ミリリットル換算で七〇〇万ケースが年内の販売目標。

広告宣伝には、鷲尾いさ子を起用し、発売時から臨場感あふれるTVCMを大量投下するほか、POPも積極的に展開する。

開発の背景と、これからの抱負について日暮常務(ビール営業本部長)は、「ビール業界の総需要の流れをみていると低価格だけで消費者は選んでいない。ヱビスのようなプレミアムビールが毎月五割増しており、価格と価値のバランスが問題だ。今回の発売は、低価格ゾーンを当社も持つため開発したものであり、技術を駆使して、ビールの味を実現すること、フレッシュローテーションと安定供給の面で国内でつくること、価格をどこまで下げられるかなど苦心した。低価格商品を投入するからには徹底的に営業を行い、当社の柱にしていきたい」と語る。

解説 ウイスキー業界は、平成元年の酒税法改正以来、旧二級市場が大幅な増税により壊滅的な打撃を受け、それ以降低落傾向が続いている。等級廃止後、消費の傾向は、いろいろな酒類に流れていったが、焼酎市場に流れた部分もかなりあったと考えられている。

洋酒業界は、二年前の酒税法一部改正(一部について逓減税率を適用)を受けて「水割りウイスキー」を発売したが、所期の大幅な販売増見込みははずれ、交通ルートなどでは受け入れられたものの、一般家庭用需要を開拓するまでにはいかなかった。

現在の市場は、高級ウイスキーが業務用市場を開拓して伸びているが、一般家庭用商品は依然苦戦が続いており、その中で善戦しているのは「ニューオールド」のような、アルコール度数と価格を抑えた商品群だ。

昨年、サントリーは「レッド リキュール」を発売したが、今回の新製品はそういった流れを受けつつ、品質をレベルアップ、旧二級市場から去っていった消費者を再び戻したいというのが考えにある。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

書籍紹介