「体質」「体調」「症状」が3要素 今様「弁証論治」を羊子先生が解説
自分の体質が自分で分かれば、毎日過ごしやすいし、病気になりにくい。一時的に体調を崩しても早く回復できる。そうしたシステムが「弁証論治」。言葉の中で、一番難しい「証」。おなじみの羊子先生に解説してもらおう。
◆「証」とは何でしょう?
「証」とは何か。これは例えば病院の検査で、客観的に出てくるものではないです。血液検査や尿の検査のデータが陽性の結果、その疾患が確認される、医師の側から判断した状態ですね。一方、患者側には、「眠れない」「いつも頭痛がする」などの不定愁訴があるとします。これは他人の立場で見ていても分からないものです。そうした他覚症状プラス自覚症状、それが「症状」と考えます。
原因がはっきりしない自覚症状で悩んでいる人がいますね。例えば「毎日ではないけれど最近腰痛がある」「いつもそうではないけれど、この1週間は疲れがとれない」といったように時間の流れの中で変化している「体調」というものがあります。
それから「体質」を見定めましょう。遺伝的なもの、環境的なもの、年齢的なもの、性差によるもの-それらの要因があなたの体質を構成します。たまたま出ている「症状」、よくそうなっている「体調」、その決め手は「体質」ということです。体質を考える時、登場するのが「気・血・水」の3要素。それぞれが、(1)ものの量が十分にあるか(2)正常に働いているか-によって下表のトラブルが発生します。単純に分かりやすい血虚(貧血)、津液不足(水分不足)以外の4つがおなじみの4匹の羊キャラクターとなっています。
|量の不足|質の問題
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気|気虚 |気滞
血|血虚 |お血
水|津液不足|水分貯留(湿熱)
◆「気」とは何か?
人の身体の中に絶えず流れているエネルギーやパワーのこと。「血」「水」を正常に流れるようにする推進力なので、気のパワーが落ちるといろいろな問題が起きる。例えていえば、血液はガソリンで「気」はエンジン。どちらもないと車は走らない。
◇「気虚」ゆるみちゃん
気の量が足りない状態。パワー不足、スタミナ不足。車でいえばエンジンの排気量が、その車を動かすには小さ過ぎるケース。
●気虚体質によく見られる症状・病気
症状 疲れやすい、動くと息切れがする、汗っかき、早起きが苦手、風邪をひきやすい
病気 臓器下垂、免疫力低下
●気虚体質の人向けの食材・漢方薬・茶
気を補う食材を。マイタケ・シイタケ・シメジなどのキノコ類、カボチャ・トウモロコシ・ニンジン・山芋などネバネバの芋類。豆腐・納豆・枝豆などの豆類。気を補い基礎代謝を高める主食もしっかり。消化力が弱いので、消化しにくい動物性タンパク質は脂肪の少ない魚や赤身の肉、鶏のささ身などを。果物はパイナップル、サクランボ、桃、ブドウ、ナツメ。
○『麦味参顆粒』
●羊子先生のアドバイス 気虚体質「ゆるみちゃん」タイプの改善
パワーが足りないのだから、まず使い過ぎず身体を充電させることです。毎日頑張り過ぎないで元気を蓄えます。睡眠をたっぷり、栄養分のある食事にも気を使いましょう。
◇「気滞」はるこちゃん
気の量は十分あっても、流れがスムーズでない。精神的な不安や疲れを感じやすく、ストレスをうまく発散できない。心身のバランスが悪い状態など。車でいえばエンジン自体の質が良くても、各部品がうまく連動できていない。
●気滞体質によく見られる症状・病気
症状 胃のもたれ感、落ち込みやすい、イライラする、寝つきが悪い
病気 不眠症、うつ病、自律神経失調症
●気滞体質にいい食材・漢方薬・茶
気の流れを良くするシソ・三つ葉・クレソン・春菊・ミョウガ・ニラなど香りの強い野菜類。そのほか大根・カブ・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワーなど。動物性タンパク質ではカキに抜群の補気効果が。果物ならキンカン・ミカン・レモン・グレープフルーツ。
○『シベリア人参茶』
●羊子先生のアドバイス 気滞体質「はるこちゃん」タイプの改善
社会生活をしていれば人間関係でストレスがかかるのは当然なんです。
気には流れる道と方向があって、上に行く気・下に行く気・外に行く気・中に守る気があります。そのルールが破れてバランスが崩れ、例えば下に行くものが下がらなくなります。気分が悪くなって嘔吐したりします。
まずはプレッシャーがかかっている自分の状況を自覚し、自分にあった発散法を見つけることが大切です。
◆「血」とは何か?
血液のことと考えてください。
◇「お血」くすみちゃん
<血虚>
血の不足状態。
<お血>
血がドロドロしていて、サラサラ流れていない状態。
●お血体質によく見られる症状・病気
症状 肩こり、頭痛、顔色が沈んでいる
病気 関節炎、リウマチ、がん
◆お血体質にいい食材・漢方薬・茶
ショウガ・ニンニク・唐辛子などの香辛料は血の流れを良くする。ヒジキ・黒豆などの色の濃いもの。そのほかアスパラガス、トマト、タマネギ、小豆、ラッキョウ。イワシ・サバ・サンマなどの青魚。果物は桃・イチゴ・ライチ・イチジク・リンゴ。
○『冠元顆粒』
●羊子先生のアドバイス お血体質「くすみちゃん」タイプの改善
加齢とともに血流が悪くなる傾向があります。合理的な飲食、適度な運動で血液の流れを良くするよう心がけましょう。
◆「水」とは何か?
身体の水分。身体に潤いを与える水分は特に「津液」(しんえき)と呼ぶ。唾液・消化液・リンパ液などのこと。またこの水分が代謝して、廃物として外へ排出しなければならない。
◇「湿熱」たまりちゃん
<津液不足>
身体の潤いが不足して、粘膜・組織が乾燥している状態。
<水分貯留「湿熱」>
代謝が悪いため、廃物となったものが身体の外に出せない。その結果、悪い水がたまり過ぎ、身体に熱がたまり、浮腫、肥満となる。
●湿熱体質によく見られる症状・病気
症状 赤ら顔、目の充血、暑がり、肥満
病気 高血圧、高脂血症、糖尿病
●湿熱体質向けの食材・漢方薬・茶
トマト・キュウリ・ナス・レタス・冬瓜などの夏野菜。繊維質の多いタケノコ・ゴボウ・白菜。アサリ・シジミなどの貝類。刺身、ワカメ、豆腐。果物ならバナナ・キウイ・ナシ・柿・スイカ・メロン。以上は基本的に身体の熱をとる食材だが、気虚が元にある場合はあまりとり過ぎない。空腹感を必要以上に感じる傾向があるので、先にお茶やスープを飲む工夫も。
○『三爽茶』
●羊子先生のアドバイス 湿熱体質「たまりちゃん」タイプの改善
湿熱の原因は代謝が悪いことですが、代謝が悪い原因は気虚や気滞であることが多いんです。水分の代謝にはパワーが必要なので、根本原因の気虚・気滞から考え改善しましょう。
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気・血・水の働きは、図のようにお互いに影響し合っている。このことから「気滞」「お血」などの体質もどれか一つに決定されるものでなく、多くは複合タイプであることが多い。1面の顔色と舌のイラストから、まずはいま一番表れているタイプを判断し、その原因を考えたい。もっと詳しく知りたい場合は、12面の日本中医薬研究会会員店に相談してみよう。