はじめよう!食育 “おもしろい”が原動力

2006.06.10 131号 2面

6月は「食育月間」、毎月19(いく=ルビ)日は「食育の日」とされ、各地で食育の取り組みが盛んになっている。「食育は、学校や自治体など誰かに任せればよいというものではなく、いろいろな立場の人が実践することが大事。また子どもだけでなく大人にとっても、食に対する知識や感性を磨くことは大切です」と食育ワークショップ「食の探偵団」主宰、サカイ優佳子さんと田平恵美さん。小学生から大人、企業、学校栄養職員の食育研修、中学総合学習のプログラム作りなど活動を広げる2人に聞いた。

○大人にも食育

食育というと子どものためのものと思う人が多いようです。「食の探偵団」も小学生向けにスタートしましたが、お母さんたちのリクエストでおとな版を開催するようになりました。「ふだん何気なく口にしている食べ物を五感を意識しながら味わってみる」そして「感じたことを言葉にしてみる」。これが私たちの食育活動の基本スタンスです。

○先入観をそぎ落とせ

私たちはふだん先入観にしばられて食事をしがち。でも、先入観をもたずに自分の五感を使って食材を味わうことで、いつもとは違う料理のしかたを思いついたり、素材の新しい魅力を発見したりできるかもしれません。

また「こう食べなければ」にとらわれる人も多い。ノウハウ本どおり「家族全員で食事をせねば」と思いつめたり。でも子どもに聞いてみると「おいしい食事」の第一条件は「母さんの機嫌がよいこと」だったりするのです。どんな状況においても食事を楽しめる、そんなしなやかさをこそ持ちたいと思うのです。遠い理想も今日の一歩から。そんな一歩一歩が集まれば日本の食卓風景はまた変わるでしょう。

○さまざまな視点で食育を語ろう

食育という言葉は、約100年前のベストセラー小説「食道楽 秋の巻」(村井弦斎著)にすでに登場しています。同著には「体育よりも知育よりも食育が大事」「食育=何を食べると身体によいのかという知識を教えること」という内容が書かれています。時代はめぐり、いま必要な食育とは何でしょう。栄養の知識・調理技術・安全な食材の選び方・農作業体験などももちろんですが、もっと根本的に「食を楽しむ姿勢を養う食育」と、「食をめぐる社会情勢も含め総合的にとらえる食育」が必要だと思います。“食は楽しい!”と思えれば、興味はどんどん広がって、環境や農業、経済問題などへも自然と関心が高まるでしょう。

日本人は農への関心が低い。フランスでは農業動向が常に新聞で大きく扱われ、一般人も農業に高い関心を寄せています。また、「キューバ危機」当時、今の日本と同じ約40%の食糧自給率だったキューバでは、輸入が急に途絶え食糧不足に陥り、栄養失調で一時的に5万人が失明したといわれます。日本がこのまま無関心や、お金で解決すればいいという考えを続ければ、近い将来の窮状は目に見えています。そういった意味でも、さまざまな視点から食育を行うことが大切です。

◆レッツトライ! 感じてみよう 「食の探偵団・おとな版」プログラムより

○その1 違いを比べてみよう

味噌、牛乳、オレンジジュース、マヨネーズなど頻繁に口にする食べ物は多くのメーカーから販売されている。メーカーによってどのように味わいに差があるのか確かめてみよう。持ち寄りパーティーで各人が味噌を持ち寄って、野菜などにつけて食べ比べても楽しい。

○その2 鼻をきかせてみよう

この香りは何だ? 湯飲み茶碗に食材を入れアルミホイルなどでふたをして小さな穴をいくつかあければ準備完了。においだけで食材を当ててみよう。納豆、たくあん、三つ葉、レモン、何でもOK。自分の中にあるにおいの記憶を、呼び起こしてみよう。

○その3 味覚のふるさとを思い描こう

1分間目を閉じ、自分の思い出の味を浮かべてみよう。公園で紙芝居を見ながら食べたソースせんべい、家族と海水浴場で食べた焼きはまぐり…。味や香りは当時の環境とともに記憶されている。その一つ一つが、いまの味覚を形成し、自分の原点になっていることに気づくはず。

◆ABC Cooking Studio、子ども向け教室「abc kids」、6/2大阪なんばにオープン

スタイリッシュな料理教室を運営する(株)ABC Cooking Studioは、昨年11月、4歳から12歳までの子どもを対象とした食のスクール「abc kids」を開校。川口(埼玉)、二子玉川(東京)に続き6月2日大阪・なんばPARKSに第3の教室をオープンした。「料理を通じ、生きる基本である食べることの大切さを豊かに楽しく学べるスクールをめざしています」とキッズ食育事業部の田中恵美子さん。調理実習前にまずテーマ食材の勉強。食材に触れ、使う調味料も味を確認。また種や苗など、成長過程もパネルを使用し学ぶ。「身じたくや片付け、いただきます、ごちそうさまのあいさつも大切に行います。さまざまな角度から、食に対する正しい知識と身近な命への愛情を育んでいきたい」(田中さん)。

▼ゲーム感覚で「食」を学ぶ、子ども専用サイト

http://www.abc-cooking.co.jp/abckids/index.html

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