ザ・ニッポン地方発 食用菊「もってのほか」(新潟・津川町)と作り方
秋が来て、今年も夜汽車のムーンライト村上号に乗りJR新潟駅に向かった。車に乗り換え国道四九号線を南下すると間もなく田園風景が広がるが、途中冬には白鳥の渡来で有名になった瓢湖を横目で見ながら走ると阿賀野川に出合い、磐越西線と沿いながら越後山脈へと上っていく。このあたりから咲花・三川・角神と温泉が続いている。静かな湖面に紅葉が映えていたり、熊汁を売り物にしている食堂があったりと飽きることはない。
阿賀野川下流の河川敷に出る。一面の野菜畑の境界線に沿って菊が植えてある。黄色の花と薄紫の花とが種々の野菜の緑とあいまって何とも美しい。
さてはこれが東京で秋の食材としてもてはやされる「もってのほか」という食用菊かと、農作業中の阿部とむさんにお話を聞く。
正確な名前は薄紫色のが「もって菊」だそうで、10月の末になるとその中でも美味とされている「かきのもと」と呼ばれる菊が出てくるそうだ。黄色の菊が一番最初に出てくるがこれにはとくに名前もなく、単に食用菊と呼んでいるという。こんなおいしいものを食べないのは「もってのほか」というくらい地元では毎日食べているとのこと。
血圧にも良いし、ビタミンも多いし、お浸し、酢の物、味噌漬(ちょっと意外)にしたり、酒のつまみやご飯のおかずにも最適。解毒効果が加わって、栄養価が高まる。
どこの家庭でも自家用畑から菊を収穫し、すぐに料理して、毎日食べているとは、いささかうらやましくなった。
(自然食料理人・田村匡世)
●もって菊のお浸し
◇材料=もって菊1パック、昆布だし100cc、塩小さじ1/2、しょう油小さじ1、みりん大さじ1
◇作り方=菊は洗って中央の芯を残してむしる。(2)鍋に湯をわかし酢を少々入れてさっと菊をゆでてザルにとり、冷ます。軽く絞って食べる直前に(A)をかける。(A)冷えた昆布だしに、煮切ったみりん大さじ1と調味料を加える
●菊の白酢和え
◇材料=もってのほか菊1パック。豆腐1/4丁、すったごま大さじ2、三温糖大さじ1、塩小さじ1/3、酒大さじ1、しいたけ中3個、しめじ1/3パック、えのき茸1/2パック、酒大さじ2~3、米酢(黒酢)大さじ2
◇作り方=(1)豆腐は重石をして水を切っておく(2)しめじ、しいたけ、えのきは汚れをとり一口大にわけて鍋に入れ酒をふりかけさっと蒸し煮する(3)すり鉢に豆腐を入れよくすり、ごまと調味料を加え味を少し濃い目にしてから、ゆでた菊と茸とをあわせる。