クオリティ・オブ・ライフ応援委員会 驚きの化粧効果 資生堂・美容講座
「お化粧をしたら、おむつがはずれて、食事も歩行も一人でできるようになった」。重い痴咽症状のあった八二歳の女性は、化粧をするようになって以来、めざましい症状回復をみせたという。徳島県鳴門山上病院では、入院患者を対象に美容講座を行っている。この「化粧療法」とも呼ぶべき、美容講座を医療に取り入れる動きが広がっている。大手化粧品メーカー(株)資生堂では、老人ホームの入居者などの高齢者を対象に美容講座を開催している。同社の美容講座の参加者は全国で年間約一七万人、そのうちの二万人は、視覚・聴覚などの障害者や高齢者であるという。
化粧をすると、まず顔に変化が現れる。ときどき、自ら老人ホームを訪問して美容講座を行っている同社の星野祐子さんは「素顔の時にカメラを向けるとイヤがってそっぽを向いた方も、化粧をすると、ポーズまでつけてとびきりの笑顔を見せてくれる。髪をとかして口紅をつけるだけでも、まるでフルメークをしたかのようないきいきとした表情になるんです」。
化粧の何よりの効果は心への影響だ。気持ちが前へ動き、身体の回復力を高めることにつながる。脳梗塞で倒れて以来、閉じこもりがちで寝たきり状態を悪化させていた女性も、病院の美容講座への出席を機会に、リハビリや仲間の会話に積極的に参加するようになったという。
◆気持ちに自信と張り
「大切なのは化粧の技術ではなく、化粧という行為が、いかにその人の気持ちに自信と張りをもたらすか……、ということだと思います」と星野さん。
美容講座の受講者は「気分転換になる」「心がうきうきする」と楽しそう。さらにこの化粧効果、男性患者の心の活性化にも役立っているそうだ。