くいしんぼ海外レポート 「バリ島編」コメ料理はインドネシア版お子様ランチ

1997.09.10 24号 15面

今年はバリ島旅行がブームのようだ。ヒンズー教の神秘的な雰囲気がいたる所に漂い、とても魅力ある島だ。旅行の一番の楽しみといえば食べ物。バリ島では何が楽しめるかというと選択肢はいろいろあるが、やはりおすすめはインドネシア料理だろう。

日本同様、主食はコメ。ナシ・チャンプルはお皿の真ん中に白飯または焼き飯が盛られ、周りを数種類のおかずが取り囲む、お子様ランチのような楽しい一品だ。おかずも親しみ深いものが並ぶ。ふわっとした揚げ煎餅、焼き鳥、つくね、豚の角煮。豆腐と野菜の炒め物、インゲンのサラダ、トウモロコシの粉で作ったお焼きなど。(もちろんそれぞれにインドネシア名あり)

味付けはいくらかスパイシー。注意が必要なのは、五種類ぐらい付いてくるソースだ。ピーナッツがベースで甘いとは限らず、辛口のものを確かめておかないと火を吹く羽目になる。

バイキングになると、この他に焼きそばもお粥もある。スープは大抵野菜入りであっさり味だ。そして必ずお目にかかるごちそうが“子豚の丸焼き”。街をゆくとこの、子豚の丸焼き専門店の看板を結構見かける。丸ごとを見てしまうと少々ひるむが、皮がパリパリで肉はやわらか。想像するほど油っぽくはない。やはりお好みのソースで。

お酒飲みには残念だが、宗教上飲酒が禁止されているので地酒のたぐいはほとんどない。それでもバリ産のワインがあり、これはフレッシュで素朴な味。またインドネシアの代表的ビール、ビンタンはとてもおいしい。

食後は当然デザート。小さくて可愛い餅菓子や、どう見ても小豆にしか見えない黒米を入れた甘いお粥もある。クレープのようで外は薄焼き卵、中は餅米だったりすることも。それから豊富な果物はさすが南国。日本人の味覚からすると決してすべてがおいしいとも言えないが、こちらも見かけを裏切る味が続出。食べ比べがとても面白い。

しかし先ほどの菓子など、実はすべて神への供物である。バリ島の人々はこの篤い信仰心と近代化へのエネルギーとのバランスを観光資源として伝統文化を継承することで保っている。そのしたたかさに目を見張りつつ、食文化には確かなアジアの環を感じる。

バリ島は噛み締めるほどに味がある。

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