自由時間術:磁器の深川家本家4人娘の姉妹展

1997.12.10 27号 5面

佐賀県有田の地で磁器の製造を始めた初代深川栄左ヱ門。後に香蘭社として有田焼きの普及に努め、後世に伝えながら、いまや創業三○○年を超えた。そして平成9年、深川家本家の血を引く四人の娘が集まり、趣味として続けてきた技を披露した。

七○歳を迎えた山中和子は書、深川泰子は木目込み人形、井門綾子は絽刺し、末娘江上栄子は日本画、とそれぞれ楽しむものは違う。しかし四人の作品に共通するのは優しさだ。仕事を持ちながら、母、そして妻として忙しい日々を送る彼女たちの自由時間の持ち方を教えてもらった。

「私はね主人に女も六○歳が定年ですよ、って申しましてね。それでも忙しいのでラジオ講座の漢詩をテープに録音して、家事をする時に聞くとか、空いた時間をつなぎ合わせて時間を作っているんです」と和子さん。泰子さんは「人形作りは瞬時の作業が多いんです。のりをつけた所で電話が鳴ったり、お客様がみえたりすると、乾いてしまって。いつもお人形にあやまりながらやっているんですよ」。綾子さんは「絽刺しは細かい作業ですが始めるとどんどん凝ってしまって。でも楽しくてね」。江上料理学院の院長でもある栄子さんは「出張中も気に入った場所を一○分くらいでスケッチするんです。短時間なのでよけい集中するんでしょうか、スケッチを見なくてもその光景は頭の中に鮮明に浮かんできて。集中したあとは緊張がほぐれた時のように充実感があって心地いいですね」。

自由な時間を持てなかった時期もあったという。でもなんとかやりくりして、いまこうして姉妹四人が元気に揃って「姉妹展」を開く。この時間こそ、自由時間の結集だと感じられた。

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