ヘルシー企業の顔 武田薬品工業・竹原 喜久郎社長、今後のテーマはエージレス
健康志向の中、食品と薬品産業のクロスオーバーが注目されている現代だが、すでに40年前、武田薬品工業(株)から誕生した武田食品工業(株)の企業理念と商品は、この世界のパイオニア的存在といえるのではないだろうか。看板商品であるプラッシーをリニューアルし3カ月、竹原喜久郎取締役社長にこれまでの同社の経緯とこれからの方向性を聞いた。
私自身が健康面で何か気を付けていることですか。別に特に意識してやっていることはありませんが、やはりビタミンCと睡眠でしょうか。早寝早起きで大体七時間くらいの睡眠はとっていますね。それでとりあえずいままで大病というのはしたことはありません。会社の机の上で引出しから出したサプリメントをボリボリと食べているのがやはり効いているのかもしれません。ストレスがたまってもこれを食べると解消できますよ(笑)。
年配の世代の方には武田食品というとプラッシー、プラッシーというとおコメ屋さんから届けられるあのジュース、というように覚えていただいていることも多いのですが、そういう形になったのには時代が影響しているんです。発売はいまからちょうど四○年前、昭和33年です。その前年に武田食品工業はプラッシー生産会社として創立しております。当時武田薬品工業では薬以外にも添加物とかビタミンとか、食品寄りのものを手掛けてまいりましたのをここで本格的にやろうと。戦後の食糧不足以降、しばらく栄養が不足する時代が続いておりまして、いまとは全く違った意味で栄養のバランスが悪くて、ビタミンB1やビタミンCが不足していました。そこでプラスビタミンCですから「プラッシー」の誕生となりました。
おコメ屋さんからの配達となったのは、それ以前にビタミンB1を添加した栄養強化米を手掛けていたご縁からです。いまでももちろんそうですが、おコメはやはり一番の基本の食べ物ですから、この分野の力をお借りして家庭に普及していこうと。その時代は住宅事情もいまとは少し違って、家庭の台所も比較的広く片隅に御用聞きで届けられるおコメの袋やおしょう油の瓶、燃料なんかが置いてあるのが普通でした。
プラッシーもその仲間に入れてもらい瓶をケースごと置いてもらっていたわけです。飲み終わったら、また新しいものと入れ換えるという方式、つまりリサイクルです。「赤ちゃんとか育ちざかりの子供さんのいるお宅だったら、ほかの飲物を飲むならプラッシーを飲みなさい」とお医者さんや栄養士さんのすすめもあってぐんと普及率が上がったと、その頃の話を先輩たちから聞いております。
そういう経緯で発展してきたプラッシーですが、今年の2月に思い切ったリニューアルをしました。パッケージが変わっただけでなく、原材料も味も新しくなりました。国産の温州みかんから輸入のバレンシアオレンジに、果汁分の比率も一○%から三○%になりました。中にさらさら果実分が入っているというウチ独自の特徴はそのままです。繊維質を入れるとお腹の調子が良くなるんですね。プラスビタミンCという発想、これももちろん変わりません(笑)。
プラッシー発売の頃とは違った意味で、いまは栄養の摂り方が注目されている時代です。全体的には栄養失調から栄養過多に、それでも一部の栄養素は不足しています。バランスの取れた食生活が基本であることは分かっていても、現実には仕事や遊びや生活の事情でつい食事を抜いてしまったり、外食をしがちになってしまったり。そんなことって、誰にでもありますよね。また、年齢や性別で気にかけていることや置かれている状況も違う、これも現代人の大きな特徴です。
そんな状況を解消してもらおうと、「ベタープラス」の考え方で、その人にとっていま足りない栄養素を必要なだけプラスしてもらえる食品を打ち出しております。錠剤の「サプリメント」は三年前から、「ビタミンサラダ」という名前の一口サイズの栄養バランス食は四年前からの販売です。
一人ひとり求めているものが違う時代だから私の頭の中には、それに対応して今後次のようなことを提案していきたい、健康のAからEまでの分野があります。Aはこれからの高齢化社会に向けてのエージレス。といっても永遠の長寿ということじゃなくて年齢を感じさせないというような、そんな方向のテーマです。Bはすでに展開しているベタープラスですね。そしてCはお分かりでしょう。そう、プラスCです。当社のC一○○○やプラッシーがその代表ですね(笑)。それからDは、女性がもっとも気にかけているダイエット。Eはエナジー、まあ活力の源になるような、そんな分野の商品概念です。
この中で私がこの先、やっていきたい大きなテーマの一つに置いているのは、Aのエージレス。いまあるものでは、超微粒子乳化技術というローヤルゼリーを生のまま乳化する技術で、「ミニドリンクの生ローヤルゼリー」を発売しています。今後はこうした分野のものをもっと手掛けていきたいなあと。いまはたまたまドリンクの形をしていますけれど、ほかに色々な食品の形が出来るのではないかと。当社の場合は安心企業ですから、まあ安心して食べていただいて、なおかつエージレスのお役に立てる、そんな商品ですね。
たけはらきくお 昭和9年1月1日、京都府生まれ。昭和31年、京都大学法学部卒業。同年武田薬品工業(株)入社、54年同社食品事業部マーケティング室長、56年武田食品工業(株)取締役管理部長、60年常務取締役管理部長、平成4年取締役社長に就任、現在に至る。