百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ナスタチューム
歴史の古いハーブは、世界各地で広く栽培され、呼び名も異なる。日本名は「金蓮花」で、トロイの戦士が流した血から生じた草ともいわれている。当初は、ハーブとしての薬効より花が美しく咲く点が注目されてヨーロッパ各国に伝わり、一六世紀頃には食用として人気を集めた。
栽培が容易で、花は初夏から咲き始め、涼しい気候ほど長く咲き続ける。オレンジ・赤・白色の花をつける。ナスタチュームの近くに他の植物を植えると病虫を防ぐ効果もみられる。このためヨーロッパではラディシュやジャガイモのそばに植えられている。
葉はすべすべとして丸く、クレソンを鋭くしたようなピリッとした風味がある。茎は垂れ下がる性質を持ち、長くなると二メートル以上にも達する。
南米が原産で寒さを嫌う花であるが、冬でも室内なら育てられ、寒中でもエキゾチックな花を楽しむことができる。
ナスタチュームはハーブとして、葉・つぼみ・花・種子などが利用される。特に葉はビタミンCが多く含まれ、クレソン同様に壊血病の予防に大きな効果があるとされている。ミカン・キャベツ・レタスなどよりも多い。また生葉の絞り汁を小さじ二分の一ほどお茶に入れて飲むとさわやかな香りとともに風邪によく効く。
薬効として血液を清浄にし、若さを呼び、食欲増進し消化を高める作用もみられる。鉄分にも富み、外用・内服いずれも殺菌効果がみられる。
生葉は生育の盛んな時に適宜刈り取り、そのまま利用するか乾燥させる。またつぼみの状態で、あるいは開花した花の状態で採取する。ヨーロッパ全域で、葉やつぼみ、花は強壮・血液浄化・解毒に良いと内服されてきた。
特に葉はハーブティーとして古代オリエント時代から愛飲されてきた。この目的として、気分をリラックスさせて疲れを取り去ること、気分をリフレッシュさせて元気を回復すること、食欲をわきたて消化をよくし、血液の循環をよくし、体液を浄化させること‐‐などがあげられている。特に現代のようにストレスが多く、疲労の抜けきらない生活において、このハーブティーは効用の高いものといえよう。つぼみ・花・種子もピクルスに使うと、素晴らしい風味が出てケイパーの代用として使われる。
ピリッとした辛味のある葉は、若葉のうちに摘み取り、花と一緒にサンドイッチやサラダに用いると優れた味となる。古代オリエント時代から食べられていたものである。
葉を細かく刻んでクリームチーズとあえてディップにしたり、トマトサラダに散らすと、ひと味違ったバラエティーが楽しめよう。
そのほかハーブバター・ハーブビネガー・ハーブマスタードなどに利用すると楽しみが倍加しよう。和名の金蓮花のように花のみでなく、葉・つぼみ・花・種子を美容・健康・長寿のために活用していきたいものである。