ヘルシートーク:「日々」編集長 高橋良枝さん

2016.11.01 256号 05面

 香ばしく焼いた油揚げをしょうがとしょうゆで食べる。みなが大好きな食べ方で、知らない人はいない。それなのに、これまで主役になったことはない–。「日々」編集長の高橋良枝さんが50年以上もの間持ち続けた油揚げへの愛が、ようやく本になりました。高橋さんの自然体のスタイルは、話を聞けば聞くほど真似をしたくなるものです。

 ●お給料日前は必ず豆腐と油揚げだった

 昔、豆腐はアルマイトのボウルや鍋を持って買いに行ったものです。お豆腐屋さんが水の中からすくい上げてボウルに移してくれる。油揚げと厚揚げは、木の引き出しに縦に並んでいて、1枚、2枚って取り出して薄い紙に包んでくれました。もう50年以上前のこと。そんな頃から、豆腐と油揚げが大好きでした。

 子どもが生まれる前から、池袋にほど近い東長崎に住んでいましたが、すぐ近くにお豆腐屋さんがあって、本当によく通いました。特にお給料日前にお財布がさびしくなると、毎日通うほど(笑)。

 当時15円で買えた油揚げや、25円のお豆腐はありがたい食材でした。これに加えて厚揚げがあると、全く違う献立ができるんですよ。もともと日本人にとっては重要なたんぱく源ですからね。

 昔の料理の中で子どもたちが懐かしいと言ってくれるのは、油揚げの卵袋です。いまは爪楊枝で袋をとじていますが、当時は戻したかんぴょうで縛ってコトコト煮ていました。

 かんぴょうもそうですが、乾物は常備しておくといいですね。ひじきや切り干し大根とにんじんの煮物など、大人向けの料理でも油揚げを加えるとコクが出て、子どもも喜んでくれるメニューになります。

 油揚げは影の存在のようですが、私の中では油揚げがないとダメな料理がたくさんあって、家にストックしてあると安心できる存在なんです。

 ●合わないものがない、油揚げカナッペ

 この本でメーンとなっている油揚げのカナッペ。誕生は偶然の産物なんです。カリフラワーのピュレを作った時、焼いた油揚げにのせたらと、ひらめきました。

 やってみたら、とても相性が良くて大好評でした。それでいろいろ試してみたら、合わない食材がないくらい。けれど必ず季節のものを選んでいます。いまの季節なら、柿や梨などをチーズと一緒にのせます。果物とチーズは相性が良くて、そこに油揚げの香ばしさが加わるから、また違う味わいやおいしさになるんです。お酒にも合うし簡単なので、一人暮らしの男性もぜひ。

 油揚げを焼くのはフライパンがおすすめです。油が落ち、お手入れも楽ですから。アイデア次第なので、自分で工夫してマイスペシャルをつくってみてください。冷蔵庫の整理にもなりますよ。

 ●食べたいものが、身体の求めているもの

 私は野菜が好きです。先日もインスタグラムに「根菜の季節到来」とアップしたばかり。大根、かぶ、にんじん、いつも葉っぱのついたものを買って、全部使います。

 かぶは、厚く皮をむいて、油揚げと合わせて関西風にだしで炊きます。厚くむいた皮と葉はきざんで、塩もみして浅漬けに。これで2品完成です。大根はくし型に切って油揚げと煮ます。これもコクが出ておいしいですよ。油揚げは根菜の味を引き立ててくれますね。

 いつも「この料理をつくるからこれを買おう」ではなくて、「おいしそう」と思って買って、後で何をつくろうかと考えます。野菜の効能とか、健康とかは考えない。おいしそうと思えるものはほとんど旬のものなので、季節のものを食べていて、お料理のいろどりがきれいなら、栄養のバランスも取れていると思っています。身体が求めているものが食べるべきものだと信じています。

 ◆プロフィール

 たかはし・よしえ 編集者として多くの雑誌、書籍、PR誌の編集に携わる。2005年、料理家・飛田和緒氏、カメラマン・公文美和氏、スタイリスト・久保百合子氏たちと、料理や器、旅などをテーマにしたリトルマガジン「日々」を立ち上げる。著書に、創刊10周年を迎えた「日々」のとっておきレシピを集めた『「日々」のごちそう帖』(文藝春秋)、昭和の味を届ける『昭和ごはん』(朝日新聞出版)がある。

 ◎高橋さん直伝、油揚げカナッペ

 ◆明太子と細ねぎ

 <材料>

 ・焼き油揚げ……1枚

 ・明太子…………1/3腹

 ・細ねぎ…………2本

 <作り方>

 (1)明太子は5mm 厚さの斜め切りに。

 (2)細ねぎは10cmほど(油揚げからはみ出る程度)の長さに切る。

 (3)3等分にした焼き油揚げに(1)各2切れをのせ、上に(2)を飾る。

 ◆切ってのせるだけ たまねぎとおかか

 <材料>

 ・焼き油揚げ………1枚

 ・たまねぎ…………1/4個

 ・かつおぶし………適量

 ・しょうゆ…………適量

 <作り方>

 (1)たまねぎは繊維に直角に薄切りにし、水にさらしてから水気を絞る。

 (2)3等分にした焼き油揚げに(1)、かつおぶしを好みの量のせる。

 ※食べる時にしょうゆをかけて。

 ◆パルミジャーノと柿

 <材料>

 ・焼き油揚げ………1枚

 ・柿………………1/2個

 ・パルミジャーノ・レッジャーノ…適量

 ・黒こしょう……適量

 <作り方>

 (1)柿は皮をむき、ひと口大の乱切りにする。

 (2)3等分にした焼き油揚げに(1)を各3~4片のせ、すりおろしたパルミジャーノをかける。

 (3)黒こしょうをふる。

 ※パルミジャーノの量はお好みで。柿の代わりに桃やメロンなどでも。

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