ココア特集

ココア特集:森永製菓 「森永ココア」発売100周年 19年度上期は好調推移

飲料 2019.11.13 11970号 05面

●今年も櫻井翔をCM起用

森永製菓の18年度ココアの実績は苦戦した。暖冬の影響を受けたことに加え、16年10月28日にフジテレビ「その原因、Xにあり!」でココアの健康効果が紹介されたことで、需要が高まり大幅増加したことの反動を引きずった。

一方、19年度上期は好調に推移している。ココア市場全体が、約3%増となる中、市場全体の伸長以上の成長を達成した。特に5月、TBSの「ジョブチューン アノ職業のヒミツぶっちゃけます!」でココアの健康効果が取り上げられると、「ミルクココア」に加え、「ココアカカオ70」「純ココア」が単月で2桁増と大幅伸長を達成。この勢いを6月も継続。さらに、7月の気温が比較的低温で推移したことが追い風となり、好調を持続した。8月も勢いが衰えず、「セノビー」の伸長も貢献し、好調のまま需要期に入った。

19年秋冬の基本的な戦略は、「森永ココア100周年」を迎えることから、さまざまな周年施策を展開する。「森永ココア」のおいしさ、情緒的価値と健康価値を訴求し、リーディングカンパニーとして市場の活性化につなげる。8月を皮切りに、商品に「森永ココア100周年」マークを加刷するなど展開を開始。基幹商品の「森永ミルクココア」は、カカオ感を向上させ、甘さを控えるなど品質改良を実施。また、数量限定で30g増量し、トライアルの獲得を狙った。さらに、100周年記念商品として、「純ココア」のレトロパッケージを数量限定発売。

新商品は、同社の継続的な健康情報を発信してきたことを活用した、健康機能に特化した、ドクターズココアシリーズとして、「血流・血圧」「柔軟性」「便通」の三つのヘルスクレームを付したスティックタイプのハイカカオココア「カカオ90スティック」を8月20日に全国発売(コンビニエンスストア・駅売店は9月20日発売)。同社では、ココアのカテゴリートップとして、長年にわたり、ココアの栄養や機能性について研究を続けてきた。新たな「機能性表示食品」となる「カカオ90スティック」で、ココアの魅力を伝え、おいしく手軽に健康づくりをサポートする。届出表示は「本品にはカカオフラバノールとカカオリグニンが含まれます。カカオフラバノールは、血流を改善することで血圧が高めの方の血圧を下げる機能が報告されています。また、運動時の身体の柔軟性や筋力、バランス感覚を維持する機能があります。カカオリグニンは、便通が気になる方のおなかの調子を整える機能があります。」となる。

商品特徴はカカオ豆に含まれる天然由来のポリフェノールの一群で多くの機能性が期待され、血圧が高めの人の血圧を下げる「カカオフラバノール」が30mg、カカオ豆に含まれる天然由来の不溶性食物繊維の一種で、おなかの調子を整える「カカオリグニン」が1.5g(いずれも1杯〈スティック1本〉当たり)入った甘さ控えめのほろにがハイカカオココア。携帯しやすいスティック包装で、外出先やオフィスなど飲みたい時に手軽に飲むことができる設計にした。内容量60g(12g×5本)、参考小売価格368円(税別)。

コミュニケーション戦略は、櫻井翔を起用したCMを今年も継続して放映予定。また11月8日(立冬)の「ココアの日」をフックに市場の活性化を図るため、ホームページで訴求。「100周年WEBサイト」を開設しさまざまな情報を発信するとともに、SNSを活用し、サイトへの誘引を図る。

森永製菓のココア発売100周年を記念し、「森永製菓におけるココア開発史とカカオ研究」を9月27日、東京・千代田区の学術総合センターで開催された日本脂質栄養学会第28回大会で発表。同社は1997年からココアの機能性について積極的に研究を重ね、これまでにインフルエンザウイルス感染抑制効果、O157などの病原性細菌に対する抗菌・殺菌効果、抗ヘリコバクターピロリ菌効果、歯周病予防効果などココアのさまざまな効能を確認している。

01年には、胃・十二指腸潰瘍などの胃病変に関わりを持つヘリコバクターピロリ(Hp)とココアについて、神谷茂杏林大学医学部教授などと共同研究を実施。これまでにココアによるHpの胃粘膜への接着抑制効果や、Hpの殺菌効果が確認された。新たにHp殺菌効果を持つココア中の成分が遊離脂肪酸であり、その成分の95%以上を構成するバルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸の中で、効果があるのがオレイン酸とリノール酸であると特定することに成功した。この特定した成分の効果を実証するため、太田慎一埼玉医科大学教授と鈴木達夫北里研究所メディカルセンター病院研究部長が臨床試験を実施。ココアの摂取はHpの除菌、菌数を抑える効果があることが判明。

02年には、「冷え性に対するココアの可能性とその実験結果」を報告。「冷え性」が原因で起こりうる諸症状と冷えに関する最新情報に関し、ココア飲用による「冷え性」の改善の可能性について実験結果の報告を行った。

実験は、「冷え性」の自覚のある女性12人を被験者として、ホットドリンクとアイスドリンクを飲用し、手の表面温度がどのように変化するかを測定する方法で行われた。実験の結果、他の飲料に対してホットココアは体表面温度の上昇が顕著に見られその持続時間が長かった。つまり、他の飲料に比較して、冷え性改善効果が高いといえる。アイスココアは、体表面温度の変化が少ないかあるいは低下しても元の温度に戻る傾向が見られた。

12年には、「ココア冷え性抑制効果試験」で、ココアがショウガと同程度の冷え性抑制効果があることを確認したと発表。また、ココアはショウガに比べ、ゆっくりと長く冷えを抑制することも分かった。これまでの研究に基づいて、冷え性を抑制する食品として代表的なショウガとココアを比較し、11人の冷え性と判断された健常な女性を対象とし、これらの食品の冷え性を抑制する効果を検証した。その結果、何もしない状態で体末梢部温度が次第に下がる室温23~24度Cで飲用後、手の甲の表面温度(体末梢部)で、ショウガの方が温度上昇の立ち上がりが速く、上昇程度が高いものの急速に温度低下が始まるのに対し、ココアは、温度の低下が緩やかで体温の持続性が高いことを確認した。ココアとショウガは冷え性抑制効果の表れ方に違いはあるものの、同じように冷え性を抑制する食品であることが分かった。

また、首、額、頬では、ココア、ショウガもそれぞれ温度上昇に大きな差はなく、ココアにはショウガと同等程度の冷え性抑制効果があることを確認した。ココアがゆっくりと長く冷えを抑制する効果について、食品の持つ温冷作用研究の第一人者である、灘本知憲滋賀県立大学人間文化学部生活栄養学科教授は、「副交感神経の亢進(こうしん)作用と血管拡張作用のあるココアならではの効果と考えられる」と見解を示している。

16年には、順心リハビリテーション病院と「第31回日本静脈経腸栄養学会学術集会」で「ココアの飲用による排便コントロールの効果」検証結果を共同発表。検証では、高齢者を含む多くの患者を看護する順心リハビリテーション病院(兵庫県加古川市)のスタッフ24人に、ココア単独、またはココア+オリゴ糖を2ヵ月間、毎日摂取してもらい、排便に関するアンケート調査を行った。調査項目は排便日数(調査日数に対する、排便有り日数の割合)、排便回数、排便性状、排便臭で、試験飲料はココアを含む飲料とし、その排便コントロール効果を検討した結果、今回調査したすべての項目で改善が認められ、特にそれぞれの調査項目で改善がより必要と思われるスタッフほど、その効果が顕著であるとの結果が得られた。

18年には、高齢化社会に向けた取組みとして「ココア摂取による便通便臭改善効果」を確認し、その結果について日本食物繊維学会第22回学術集会で発表。同研究の背景や目的と概要は、日本では便秘を訴える人が年を追うごとに増加し、厚生労働省の調査(14年国民健康・栄養調査)によれば、人口1000人当たりにすると男性26人、女性48.7人となっている。特に20~60歳では女性が圧倒的に多いのが特徴で、便秘による女性のQOL低下が問題化している。60代以上では、男女ともに年齢が上がるにつれ便秘を訴える人が増加。近年の高齢化に伴い便秘を訴える人は確実に増加することが予想され、便秘が高齢者のQOLを著しく低下させる一因として危ぐされている。

介護の現状では、介護保険事業状況報告(年報)によると、要介護(要支援)認定者数は、16年3月末現在で620万人で前年比で15万人増と年々増え続けている。こうした中、悩みの一つになっているのが排せつ介助だ。家庭内の介護や施設での看護でも、「便の臭いが少なくなる」だけでも精神的負担が減ることから、便臭の低下は望まれている。ココアの便通改善については、すでに「ココアに含まれる豊富な食物繊維による便秘の改善」も報告されているが、臨床試験としての報告例は少ないのが現状。

さらにココアによる便臭改善については機器分析による客観的な報告はほとんどない。そこで同社は、便通や便臭改善に関与する成分としてココアの中で最も多く含まれる不溶性食物繊維の一つである「カカオ由来のリグニン」に着目し、ココア飲料を用いたヒト介入試験を実施した結果、便通や便臭改善が確認できた。排便の気になるにおい・ふん便中のアンモニア量を、ココア摂取開始前と摂取後でイオンクロマトグラフィーを用い分析、比較した。ふん便中のアンモニアの変化量は、ココア摂取時では減少、対照食品摂取時では増加した。統計解析の結果、食品間比較でアンモニア濃度減少の有意差が認められた。これらの改善効果に関与する成分としてはココアに最も多く含まれる不溶性食物繊維であるカカオリグニンの関与が高いと考えられる。

今後も、同社は企業理念である「おいしく、たのしく、すこやかに」のもと、ココアの機能性の研究や健康寿命延長のための研究を継続する。

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