セブンイレブン、東南アジアで攻勢 カンボジア・ラオス展開へ
大手コンビニエンスストア(CVS)チェーンのセブンイレブンが東南アジアで攻勢を強めている。タイで日本に次ぐ1万1983店(3月末現在)と圧倒するのに加え、フィリピンで2664店(19年6月末現在)、マレーシアで2347店(同)といずれも2位以下を大きく引き離す。21年にはカンボジア、22年にはラオスでの出店も予定している。人口6億5000万人の巨大市場東南アジア。セブンイレブンがその先に目指すものは。1989年にバンコクでタイ1号店を開業させたセブンイレブン。地場小売最大手のCPグループと組んで、全77県にくまなく店舗展開する手法は日本と一緒だ。ほとんど客もいないだろうと思われるような国境近くの山間部にもセブンイレブンの店舗はある。ここで日本と同様、食品や日用品の販売から銀行や請求書の支払い、配達などのサービスまでを手掛けている。
合弁相手のCPグループは、タイ最大の財閥企業。今年3月には、英小売大手テスコのタイ事業を106億米ドル(約1兆2000億円)で買い取り、足元の強化を図った。これによって約2000店舗(うちCVS型約1500店舗)がそっくり積み上がった。CVS分野の国内占有率は9割を超えた。
こうして得た資金とノウハウを武器にセブンイレブンは、タイ隣国のカンボジアとラオスで新たな販路を広げようとしている。カンボジアではCP傘下のCPオール(カンボジア)がマスターフランチャイズ契約に基づき店舗展開を手掛ける。成長が始まったばかりのこの国では、CVS店はまだ数えるほどしかない。一気に出店攻勢をかけて、地位を固める考えだ。
ラオスの首都ビエンチャンでも同様に、CPがマスターフランチャイズ契約による出店を行う。設立した事業会社CPオール・ラオスは、カンボジア事業と同様に最長50年間の長期営業権を持つ。ラオスのCVS業界は、ライバルのタイ財閥大手TCCグループが手掛けるCVSチェーン・ミニビッグCなどが先行するものの、早期の追い抜きが可能と見る。人、物、金を集中投入する考えだ。
一方、新規出店を果たしたものの低迷を続けたり、撤退した市場もある。09年に進出したインドネシア。年30店舗のペースで出店攻勢を続け、14年末には187店までに急成長。しかし、地場小売大手が展開する2大ブランドに阻まれ、その後は勢いも鈍化。17年6月には全店を閉鎖し、撤退を余儀なくされた。
入れ替わるように17年6月に参入したベトナム市場でも、セブンイレブンは苦戦を強いられている。地場財閥大手ビングループが展開するCVS店ビンマートプラスは全土に2000店以上。これに対しセブンイレブンは、19年6月末現在34店舗と大きく水をあけられている。他の日系や米系との競争も激しく、活路を見いだせないでいる。
こうした中、セブンイレブンが「最後のフロンティア」(CPグループ)として熱い視線を注ぐのが、人口5500万人のミャンマー市場だ。18年に外資規制が一部緩和され、さらなる開放にも期待が膨らむ。CPを含む複数のタイ小売企業はすでに事業化調査を開始している。
現在、ミャンマーのCVS市場は、最大都市ヤンゴンを中心に500~600店舗ほど。地場大手4社が100店前後で分け合っており、抜きんでたブランドはない。「そこに出店のチャンスがある」とCPの関係者。セブンイレブンなどの大手コンビニチェーンは虎視眈々(たんたん)と進出時期を探っている。
(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)