キャッシュレス還元、流通大手トップは批判 イオン岡田元也社長「政治の崩壊」
消費税の複数税率化と同時にスタートしたキャッシュレス・ポイント還元に対し、対象とならなかった流通大手チェーンの経営トップからは制度への批判が止まらない。景気対策の効果を論じる以前に、不公平で競争環境をゆがめるものと非難する。20年6月末までと決められた実施期間後にも、追加措置があるのではないかといった懸念も見られる。
食品スーパー(SM)最大手のライフコーポレーション・岩崎高治社長は、9日の決算会見で「還元対象が業態や企業規模によって区別され、競争環境がゆがめられている。政府は9ヵ月と言っているが、延長されないという保証はない」と警戒する。還元対象となる中小チェーンやコンビニエンスストア(CVS)への対抗はもちろん、消費環境が悪化してきた中での増税のため、確実に高まっていくはずの節約志向への対処が必要としている。
同日、イオンの岡田元也社長は決算会見で政府の還元策について「めちゃくちゃなことが堂々と行われた。このようなことがさらに行われるとしたら、イオンとして対応しなければならない」と憤りを示した。
岡田社長が批判するポイントは大きく二つあり、一つは競争環境がゆがめられている点だ。「CVSが中小企業ではないことは明確だ。還元事業による売上げ効果は、その一部が本部に回る。こんな不公平が通ることに対し、経済産業省とCVS業界の関係はどうなっているんだと思う」(岡田社長)
批判の2番目は、決済手段の違いで支払金額が変わるという制度は、消費者の選択の自由を阻害する「強引な政策」であるという点だ。キャッシュレスを優遇する半面、現金利用者には不利益を強いていると指摘する。
岡田社長は、「デジタル化は進むべきだが、消費者不在のこのような強引なやり方を小売業が受け入れるべきではない。政府内の少数で決められたことが、景気対策として実行された。不公平であることに反省の色もない。霞が関も永田町もそれに流され、マスコミの批判も少ない。政治が崩壊している」と語った。(宮川耕平)