北海道ラーメン特集

◆北海道ラーメン特集:個性と差別化を磨き生き残りへ 厳しい環境下、魅力PR

外食 2019.06.03 11886号 10面
旭川の老舗店

旭川の老舗店

札幌の人気店

札幌の人気店

●店主の人柄やこだわり、どんぶり一杯に凝縮

【北海道】少子高齢化などを背景に消費の減少傾向が続く中、昨年秋の輸入麦価引き上げに伴う麺納入価格の値上げや10月に予定される消費増税、折からの人手不足問題など、道内ラーメン店を取り巻く環境は厳しさを増している。

「5月から麺1玉当たり2円ほど値上げになった」(某ラーメン店)。各店との個別交渉のため店によっては値上げ時期が前後するがこの春、製麺業者とラーメン店間で価格をめぐって綱引きが繰り広げられた。水道光熱費や物流費、各種食材の値上げ、人件費高騰も重くのしかかり、「消費増税のタイミングで値上げしなければ、経営が成り立たなくなる」(同)と、多くの店が窮状を吐露。各店は消費増税を見据え、競合店の動きもにらみながら値上げ幅や実施タイミングを探っている。

今、札幌でラーメン価格の主流は750~850円。「ただでさえ高いといわれる中、増税で値上げになると消費はさらに落ち込む」(製麺業者)と、消費者のラーメン離れを危惧する声も少なくない。ちなみに道内1世帯当たりのラーメン(中華そば)外食年間支出金額(総務省統計局家計調査)をみると、10年前の08年に6511円だったものが、18年では6311円と200円の支出ダウン。世帯人数減はあるにせよ、当時からのラーメン単価上昇分も考えると支出金額以上に消費杯数の落ち込みは大きいとみられる。一方、そば・うどん外食は08年が3870円、昨年が5130円。10年で1260円の支出増となっており、麺食間の大きな変化も垣間見える。

人手不足も深刻だ。「募集をかけても集まらない。雇っても長続きしない」と、店主の多くが嘆く。新規店舗や北海道物産展などイベントへの出店意欲があっても、人の手配が付かず断念するケースが少なくない。人材確保・定着を狙って福利厚生面の充実、労働環境改善に力を入れる店も増えてきた。某チェーン社長は、「北海道遺産にも認定されている北海道のラーメンだが、個人経営の店が圧倒的多数を占め、産業構造は極めて脆弱(ぜいじゃく)。若い人が夢と希望、誇りを持って働ける環境にしなければ未来はない」と業界の地位向上を訴える。

厳しい環境だが、各店は個性と差別化を磨いて生き残りをかける。正統派で札幌ラーメンの王道をいく店、老舗ののれんと伝統の味を守り続ける店、創作メニューや道産食材使用が売りの店、地域密着で親しまれる店、ワンコインなどコスパを訴求する店、道外に市場を求める店、インバウンド需要取り込みに積極的な店、SNS販促強化で集客につなげる店、それに道外からの参入組も加わり、集客を競い合う。

ラーメンは日本人に最もポピュラーな麺メニューでもあり、そばやうどんに比べ個性が強く多様性と奥深さが人々を引きつける。動物系や魚介系、煮干し系などスープ、つけ麺や油そば、メガ盛り、トッピング、麺の種類も豊富で、味やバリエーションの広さは無限大。100人いれば100通りの好みがあり、作り手の数だけ味がある。店主の思いやこだわり、うまみが凝縮されたどんぶり一杯に人々の味覚を刺激し感動させる魅力が詰まっている。

そんな思いをめぐらせながら今日の昼食、ラーメンを楽しんではいかがだろうか。道内で活躍する人気店、実力店の横顔を紹介する。(長島秀雄)

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