道産ワイン現況:消費者・マーケットへGI制度周知徹底 高まる産地としての注目度
【北海道】今年の北海道は春、夏と高温、好天に恵まれたことで、ブドウの生育も順調に進んだ。天候不順で大幅減産となった昨年から一転し豊作となり、糖度ものって品質の高いブドウが収穫され、各ワイナリーは11月一杯まで仕込み作業に追われている。ワインクラスター北海道・阿部眞久代表は、「7、8月の気温が高めで推移し、過去40年間で2番目に高い積算温度を記録。今年はブドウやリンゴ、プルーンなど果樹全体に大豊作。ワインも最高の出来を記録した1999年以来の『ビッグ・ヴィンテージ』になりそう」と力を込める。この数年、原料ブドウの収量不足で計画を下回る生産を強いられていたワイナリー各社は、久しぶりに訪れたフォローの風に期待感を高めている。(長島秀雄)
●「ビッグ・ヴィンテージ」に期待
後志管内をはじめ空知や富良野、十勝など、ワイン産地としての集積が進む北海道には、19年9月末現在で果実醸造免許を持つワイナリーやヴィンヤードが39ヵ所に上る。8社だった2000年と比べると、約20年で5倍近くに急増した。近年の温暖化に加え、冷涼な気候、栽培・醸造技術の向上、ワイン特区制度なども大きな後押しとなっている。管内11ヵ所にまで増えた余市町をはじめ、仁木町、ニセコ町など特区制度を活用し参入した小規模ワイナリーも数多い。後志以外でも、ブドウ農園を開設したえべおつWein(ヴァイン)や、JCUが設立した子会社・そらぷちファームなど参入が相次ぐ滝川、まるき葡萄酒(甲州市)を経営するグループレゾンが新会社を設立した中富良野、9月に果実酒製造免許を取得した相澤ワイナリーの帯広など、ワイン集積は道内各地へと広がりを見せている。
さらに、北斗市にブドウ園を開設したサッポロビール、余市町で栽培を開始したアサヒビールなどの大手資本も参入。かねて進出表明していたフランス老舗ワイナリーのドメーヌ・ド・モンテーユ社は、函館管内に現地法人「ド・モンティーユ&北海道」を設立し今年からワイン用ブドウ苗木の定植を開始、7月に植樹祭も行って道内でのワインプロジェクトを推進中だ。「海外資本、しかもフランスブルゴーニュで長い歴史を誇る名門ワイナリーが、北海道で農地を取得しブドウ生産からワイン醸造まで行うのはエポックメーキングな出来事」(ワインクラスター北海道・阿部代表)で、今や北海道は世界的にも注目のワイン産地へと変貌を遂げている。
昨年は、国税庁が地域ブランドを保護する地理的表示(GI)制度に基づき、ワイン産地として指定を受けた北海道だが、消費者、マーケットへの制度の周知徹底が課題のようだ。道産ブドウを100%使い、道内で醸造されるなどの条件を満たし、品質基準をクリアしたワインが「北海道」と明記できるようになった。現在、認定を受けたワインは14社170銘柄まで拡大しているが、規模の大小やオーナーのスタンスによって制度に前向きなところと消極的なワイナリーもあり、捉え方は一様でない。「ブランド保護のためには有益だが、販売への影響は限定的」との認識が主流を占めており、今後メーカーや流通、行政など一体になって制度の周知を進めマーケットへの制度浸透を図っていくことが必要だ。いずれにせよ、北海道をワイン産地として保護すべきと国が認めたGI指定は、将来にわたって知名度向上に大きな追い風になることは確か。全道のワイナリーやブドウ産地が連携を深め、ワイン先進地・山梨や長野に負けない統一ブランドの発信と一層の品質向上につなげてほしい。