苦戦が続く加工ごま市場 東京2020大会で「金ごま」注目に期待
2019年の加工ごま市場は、9月までは前年並みで推移していたが、10月以降は消費増税や異常気象を含むさまざまな要因が重なり苦戦が続いた。2020年は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)が開催され、金星(きんぼし)を連想させる金ごまが注目食材に挙げられている。これを商機ととらえた積極的な売場やメニュー提案に期待したい。
天候不順などが消費に影響
2019年の食品ごま販売は、4月はゴールデンウイーク10連休前の特需とTVのごまの健康報道の影響で、前年比大幅増となるメーカーもあった。5月は4月の特需反動で落ち込むが、6月も大きな要因が見当たらないにもかかわらず伸び悩む月となった。4月以降は業務用白ごまと黒ごまの値上げが実施され、極端な安価取引は減少したが、業務用ごまの販売量は伸び悩んでいる。
近年では温暖化の影響で異常気象が定着。加えて、働き方や家族構成の変化で消費動向が過去とは異なってきている。今年は梅雨明け1週間は猛暑となるが、8月上旬以降は全国的に曇天や台風が多発し、食料品全体の動きが悪かった。

ごまの需要は、夏の乾麺と冬の鍋物に連動する形で大きな山があるが、梅雨明けまでは乾麺の動きが突出して悪かったのが印象的で、ごまの動きも少なからず比例した。乾麺に頼らない価格訴求品や特売などで何とかしのいだ状況だ。
10月以降は消費増税が実施されたが、加工食品は据え置きも量販店での食料品の販売状況は悪化。10月中旬まで東海、関東、上信越が台風や大雨の影響を受けたことで消費動向が例年並みに戻らず、ごま製品の販売も苦戦が続いた。
例年であれば、11月後半は気温が下がり鍋モードに期待する時期だが、今年は気温が高く、暖冬による鍋関連乾物の動き低迷が懸念される。12月も暖冬傾向にあるが、年末モードでの量販店の盛り上がりに期待したいところだ。
ごま原料の相場は、トルコなどから輸入される金ごまの相場が歴史的に高いレンジとなってきたことと、ミャンマー産の黒ごまのさらなる高値の動きがごまメーカーを圧迫している。
ごま原料の安定供給に関しては、残留農薬基準値改正の動きが強化される中、ごま輸出産地側と日本の商社団体、全国胡麻加工組合による安全に対する産地啓発や、国内外での作物残留検査の積極的な試み、残留農薬の自主検査強化などを行っている。
ごまは原料の99.9%を輸入に頼り、原料原産地表示に関して業界団体による表示のあり方の提示も検討している。
「11月5日ごまの日」には大規模販促を展開
全国胡麻加工組合は11月5日を「ごまの日」と制定し、活動を展開している。制定3年目となる2019年は、食品スーパーで大規模宣伝販促を実施。消費者に「ごまの日」をアピールした。
愛知県北名古屋市の真誠は、近畿と関東地区の食品スーパーで宣伝販促を展開。「Mart読者が選んだ2019秋冬新商品グランプリ」の加工食品部門で1位となった「クラッシュアーモンドすりごま」が完売するなど盛況だった。

東京都千代田区のマコトは、関東地区の食品スーパー29店舗で試食を含めた販促を実施。試食では、いりごまを使用したパン、練りごまを使用したホウレンソウのごまあえ、味付けごまをトッピングした乾麺を提案した。
名古屋市の浜乙女は、県内食品スーパー13店舗で販促を展開。自社オリジナルの店頭販促用POPも好評で、ごまの需要喚起につなげた。
大阪府寝屋川市のカタギ食品は、福岡県内の食品スーパーや展示会で「ごまの日」をアピール。「金ごま」「和え胡麻」の試食提案を行った。
記念日に当たる11月5日には、京都府南丹市の胡麻日吉神社で奉納式を行い、組合各社のごま製品を奉納し五穀豊穣(ほうじょう)と企業繁栄を祈願した。

「ごまの日」は、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富で栄養価が高く、健康に良いごまをより多く摂取してもらうことを目的に2017年に制定。日付は11と5で「いい(11)ご(5)ま」と読む語呂合わせと、ごまあえなどごまとの相性が良いホウレンソウの旬の始まりの時季であることに由来する。
※日本食糧新聞の2019年12月27日号の「加工ごま特集」から一部抜粋しました。