育児用調製粉乳・ベビーフード特集

育児用調製粉乳・ベビーフード特集:育児用調製粉乳=出生数減を反映

乳肉・油脂 2020.03.09 12023号 06面

◇生産量1.6%減

19年1~12月の出生数(人口動態統計速報値=外国人を含む国内の実需ベース)は、前年から5万2232人減少し、89万8600人となり、過去10年で最も大きな下げ幅となった。17年に100万人の大台を割って以来減少幅が大きくなり、ついに90万人を切って過去10年の最小値を更新した。

減少が続く中でも、昨年の育児用調製粉乳(育粉)生産量は前年比3.9%増と増加したものの、今回は一転、同1.6%減の2万7337t。

国内向け生産量を出生数で割った乳児1人当たり使用量は22.2kgと減少し、少子化の状況を如実に表している。

一方、輸出用は3年連続で増加。輸出比率(生産量のうち輸出仕向け量)もここ10年で最も高まり、引き続き「ジャパン・ブランド」の価値の高まりによるEC(電子商取引)ルートを中心とした購買が下支えしているとみられる。

●輸出用=輸出比率25%超え

19年の育粉輸出量は、前年比28.3%増の7389tで、10年以来の7000t超えとなった。輸出比率は27.0%と近年で最も高い水準となり、8年連続での増加となった。アジア圏での「ジャパン・ブランド」への信頼と評価は依然として根強く、海外生産や為替動向などの影響はあるものの、出生率の高さも維持していることから、今後も引き続き伸長傾向は続くと予想される。

輸出量が急速に拡大した07年以降、08年、09年と連続して110%以上の増加が続いた。このころは、08年に中国で「メラミン入り粉ミルク事件」が発生し、日本製品の需要が急拡大。09年には輸出比率が2桁の大台に乗った。10年も輸出量は2桁増で推移し、輸出比率も20%を超えたが、この時期は特に中国経済・香港経済が急速に拡大発展。中国・香港への輸出量は7150tに達し、全輸出量の9割以上を占めていた。

しかし、10年3月に宮崎県で口蹄疫(こうていえき)が発生。翌4月から中国政府は日本製乳製品の禁輸措置を断行し、同国への輸出は急減した。7月に解除されたものの、輸出入手続き協議は遅々として進まず、さらに11年3月には東日本大震災による原発事故が発生。放射性物質による汚染問題で再び禁輸となり、中国・香港への仕向け量は激減、輸出量全体も12年には約1000tにまで落ち込んだ。

13年以降は再び回復基調となり、輸出比率も徐々に高まっていった。15年には10%を突破し、18年にはついに20%の大台を超えた。

19年の主要輸出国・地域を見ると、1位は引き続きベトナムで、4550tとなり、35.7%増と大幅に伸長。2位の台湾も増加を続け、6.4%増の1509tとなった。続く香港は82.7%増の791tと拡大したものの、直近最大だった16年の水準には届いていない。まだ物量は少ないものの、カンボジアはここ5年間で急拡大し、続くモンゴルも100tを超える輸入量を維持している。中国は18年に180tを超える量を輸入したが、19年は87tに激減した。

ベトナム経済は発展スピードを速め、かつての中国・香港経済のように国民所得の向上で「ジャパン・ブランド」のニーズが高まっているとみられる。注目されるのが、粉ミルクに加え、明治のキューブタイプが伸びを見せ、機能面やブランド価値の浸透がさらに進んでいると考えられる。アサヒグループ食品はベトナムで19年から和光堂ブランドの粉ミルクを発売し、これにより海外事業全体で売上げが3.5倍に成長していることからも、同国の旺盛な需要は今後も続くと予想される。

中国は19年1月からの「中国電子商取引法」施行により、インターネットによる代理購入にも営業許可が必要とされ、納税義務が生じることとなったため、「爆買い」に代表される購買行動が変化すると思われたが、最終ユーザーの需要は依然として高まり、引き続き日本製品の購入は根強く推移すると見られている。

●国内消費=生産・使用量とも減

輸出用が伸長する一方、国内消費は減退感が見られる。出生数減少が反映された形だ。

19年の出生数は、速報値で89万8600人となり、ついに90万人を割り込んだ。生産量全体から輸出量を差し引いた国内向け育粉生産量は、前年から10%近く減少し、1万9948tとなり、2万tを切った。乳児1人当たり使用量も合わせて減少し、22.2kg。これは東日本大震災が発生した11年を下回っている。

通常、使用量を増加させる要因として、短期的に発生する災害対応がある。18年は7月の西日本を中心とした豪雨災害や、9月に発生した北海道胆振東部地震とそれに伴うブラックアウトなどがあり、17年から約1kg増加した。19年は8月に佐賀県を中心に発生した九州北部豪雨、9月に発生した台風15号による被害があった。特に、千葉県の台風被害は甚大で、電気、ガス、水道などのライフラインが寸断された。10月に東日本を通過し、関東・甲信越・東北地方に記録的な大雨や河川氾濫などの浸水被害をもたらした台風19号の時は、KS-POSデータでは「育児用粉ミルク」が前年同期比290.9%増を記録した。

しかし、国内向け生産量自体の減少や、自治体などによる乳児栄養確保の支援、さらに3月に国内販売が解禁となった乳児用調製液状乳(液体ミルク)の提供などの複合的な要因もあり、災害そのものによる急激な使用拡大には至らなかったことが予想される。

出生数は17年に100万人を切り、初婚年齢は18年に29.4歳、第1子出生時の母の平均年齢は30.7歳と、晩婚化・晩産化が進んでいる。また、第1子の出産年齢が上がると第2子以降の出産が減る傾向もある。

婚姻数と1年後の出生数の相関を見ても、婚姻数が18年は60万2735件で減少が続き、出生数も同様となった。19年は5月の改元で、「令和婚」で単月伸びを示し、婚姻数が久々の増加に転じたが、果たして出生数も合わせて増加するかどうかは、注視が必要だ。

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