コメ販売不調 コロナ禍で業務用低迷 新米の価格暴落危惧
コメの販売が不調だ。新型コロナウイルス感染拡大による業務用需要の落ち込みが要因で、農林水産省が7月30日に公表した「米穀の取引に関する報告」によると、3~6月のコメ需要量は、中食・外食用で前年比8万6000t(18%)減となった。家庭用は7万7000t(8%)増加したものの、業務用の落ち込みをカバーできていない。訪日外国人旅行者によるインバウンド需要の減少が要因だ。
少子高齢化や食生活の多様化で近年、主食用米総需要量が毎年10万tずつ減少しているが、今年は前年より22万t少ない713万t(速報値)と見込まれ、コメ離れが加速化。結果、6月末現在の民間(生産者・JA・流通)在庫量は201万t(速報値)に上り、前年比10%増加。4年ぶりに200万tを上回り、コメ余りが深刻となりそうだ。
これに伴い有力卸からも「販売進度が遅い」との声が聞かれる。特に業務用の減少が深刻で、大手外食チェーンが軒並み大規模閉店を決める中「回復は当分見込めない」と悲観的。巣ごもり消費による家庭用が頼みの綱だが、需要が急激に高まった2~3月の反動減は脱したものの、三密を回避するためのチラシ自粛は続いており、販売が盛り上がらない状況という。
南九州や四国の早期新米の出回り時期を迎え、産地も19年産米を売り急ぎ始めた。主産地東北の宮城と秋田、青森の全農各県本部は、端境のこの時期には極めてまれな、消費者キャンペーンを実施。各県揃って「産地応援」を前面に打ち出す。
そこで価格は、産地が卸に販売する相対取引価格(同省調べ・60kg当たり)で6月、前月より105円安の1万5642円となり、前年より60円安い。だが実際は、これ以上に下落している。
一方、早期新米は梅雨明けが遅く、大雨・洪水が頻発する中、例年より1週間程度刈り取りが遅れている。出来秋の主産地新米の品質が気になるが、それ以上に豊作になれば供給過多となり、価格暴落することが危惧されている。(佐藤路登世)