大手卸、第2四半期業績 取引構造で明暗分ける 業務用・CVSで苦戦続く

卸・商社 決算 2020.12.04 12155号 01面

 大手食品卸の第2四半期業績は、取引構造の違いによる明暗がさらに顕在化した。第1四半期以降の内食需要の高止まりやコスト改善効果で大幅な営業増益になった卸がある一方、業務用・CVSチャネルの不振を背景に減益・損失を強いられるなど真っ二つに分かれた格好だ。下期も新型コロナウイルスの感染拡大が及ぼす影響範囲が依然不透明なことから、通期業績については各社とも慎重な見方。上期に大幅増益で着地した企業も期初予想を据え置きとした。(篠田博一)

 11月30日までに第2四半期決算を開示した21年3月期の総合大手卸の業績を見ると、三菱食品と伊藤忠食品が減収増益、日本アクセスは増収減益、三井食品は減収営業損失の着地となった。

 上期の食品流通は緊急事態宣言が発令された4~5月以降も内食傾向が継続し、SMやDgSなどの家庭用売上げが好調に推移。一方でCVSは在宅勤務や外出自粛などがもたらした消費影響からの回復が鈍く、遅い梅雨明けなど天候面の影響も受けた。外食は休業や時短営業といった一時の最悪局面からは脱したものの、回復には程遠い水準で推移。

 大手卸各社の上期業績には、そうした市場環境の変化が明確に反映された。減収が相次いだ要因には各社の個別事情や昨秋の増税前の駆け込み需要の消失などあるが、大きく言えばCVS・業務用売上げの不振を家庭用の伸長でカバーしきれず、それが利益面にも顕著な影響を及ぼした。

 三菱食品は上期にSM(前年比1.5%増)、DgS(同7.5%増)が堅調に推移した半面、業務用取引を示す「ユーザー」(売上構成比2.0%)は19.1%減。伊藤忠食品もSM5.5%増と伸長したものの、外食含む「その他小売業」(同4.2%)は29.4%の大幅減となった。それぞれ主要取引卸を担うローソン、セブン・イレブンのCVS業態向け売上げは三菱食品10%減と苦戦し、伊藤忠食品0.2%増と顕著な回復は見られない。

 ただし、両社は上期市場で最大のマイナス影響を受けた業務用売上げの構成比は低い。また減収や個別要因に伴う売上総利益率の低下を強いられつつも、物流与件の緩和や合理化、諸経費減少の効果などで販管費率を大きく改善し、それぞれ2桁の営業増益へつないだ格好だ。

 一方、上期21.1%の営業減益となった日本アクセスは「CVSと外食チェーン向け通過額減少によるロジ事業の売総率の悪化」を引き続き苦戦の最大要因に挙げる。粗利が低下する中で販管費率を前年並みの5.56%に抑え込むなど、第1四半期に比べ減益幅を大きく縮めたものの、ファミリーマートを主体とするCVS、外食・デリカなど業務用を合わせて4割強を占める独自の事業構造(19年度実績)に回復の足踏みを強いられた格好だ。

 三井食品はSMやCVS業態が前年比1.5%増、DgS・DSは7.4%増と家庭用売上げは伸長したが、売上構成比18.3%を占める卸・外食産業向けが24.1%の大幅減を強いられた。そうした中で飲食店向けの取引量の減少と物流費のバランス調整に苦慮。売上総利益率(9.52%)は改善したが、販管費率(9.59%)が悪化傾向を示し、3億円の営業損失となった。

 下期は生活防衛意識の高まりによるSMの競争激化に加え、政府の「GoToキャンペーン」の後押しなどでいったんは回復へ転じた外食市場が11月からの感染拡大で再び悪化するなど見通しが厳しい。上期は大幅増益となった三菱食品、伊藤忠食品とも通期業績予想は修正せず、市場の変化をとらえた営業戦略やデジタルシフトによる経営合理化などへ継続して努める方針だ。

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