食品値上げ、80業種へ拡大 原料・コスト事情厳しく 売価上昇不可欠な局面

総合 ニュース 2021.12.13 12336号 01面

「新型コロナ影響も含む世界的な需給変化で、下期は全ての食品が値上げする」–。本紙6月の価格改定記事で卸関係者が予測した通り、あらゆるカテゴリーへ食品値上げが拡大している。上期6月までに値上げした食品は本紙調べで14業種だったが、10日現在、来年からの実施も含むと約80業種が価格改定を表明。緊急事態宣言解除以降、小売業が卸へ調達コストを引き下げる動きが再燃しているが、国際情勢も背景に今後も原料・資材費などは下がらないとの見方が支配的だ。(篠田博一)

今春の食用油や小麦粉、大豆、砂糖など主原料系の高騰は周辺商材へ急速に波及し、直近でも冷凍食品や醤油、食肉加工品、水産練り製品、豆乳、ウイスキーなどが来年からの値上げをアナウンスした。すでに値上げしていた食用油が来年5度目、マヨネーズが2度目の価格改定を発表するなど、食品業界は空前の値上げラッシュに突入している。

前回19年の食品値上げは国内人件費や物流費の高騰が主要因だったが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う環境変化の影響が大きい。世界的な経済活動の回復に伴う原料需要急増や輸送コンテナ不足、投機、不作、原油高、円安といった複合要因に加え、米国主導のバイオ燃料の需要増が穀物相場を押し上げる構造変化も影響した。

原油相場は11月末の政府の石油備蓄放出やオミクロン株の感染拡大懸念などでいったん落ち着いたものの、「中国など諸外国の消費やバイオ燃料需要は今後も拡大する。コロナ対策で各国が増刷したマネーが投機筋に流れることも考慮すれば、当面は食品原料の下がる要素が見当たらない」(大手卸トップ)と厳しい見方を示す。

足元の懸念は、相次ぐ値上げが消費へどう影響を及ぼすかだ。岸田政権が企業へ3%の賃上げを要請する(官製春闘)動きも出てきたが、物価上昇に伴う所得の増加が実現できず、電気やガスなどの値上げも家計を直撃するとなれば、消費マインドは冷え込むと見るのが妥当だろう。

そうした中で、容易に値上げへ踏み切れないのが小売業界だ。10月の緊急事態宣言解除で外食市場へ客足が戻りつつあり、家庭内食に集中していた消費の分散化も始まった。業績を維持したい小売業の思惑もあり、「この2年間中断していた卸への見積もり合わせが、下期から活発化している」(複数の卸幹部)との声も後を絶たない。

今後も値上げをめぐる製配販3層の厳しいせめぎ合いが必至の情勢だが、今回の原料価格の上昇は日本と諸外国の経済成長格差や長期のデフレ環境を含め、一過性ではないとの見方も強い。食品界が安全・安心な品質を伴う商品の供給責任を果たし、事業活動の継続を図るためにも、売価の上昇が不可欠な局面だ。

ある食品卸トップは「このまま食品の安売りが続けば、いずれ日本は原料が買えなくなり、企業も業界も立ち行かなくなる」と警鐘を鳴らし、「今回は帳合返上も視野に小売業との交渉に臨む」と強い決意を示す。

年明け以降も大型カテゴリー含む食品値上げが相次ぐ中、製配販3層が適正売価の推進へどこまで歩調を合わせられるか。業界の将来を左右する正念場だ。