離島の挑戦 三宅島漁業協同組合(上)新型コロナで魚価半値に

生鮮食品 連載 2020.05.15 12051号 06面
三宅村の水産振興担う三宅島漁業協同組合

三宅村の水産振興担う三宅島漁業協同組合

新型コロナウイルスの世界的な流行(パンデミック)で離島も疲弊している。東京から南へ約180kmの位置にある三宅島(東京都三宅村)の観光・水産業も大きな打撃を受けている。三宅島漁業協同組合の小田切強課長は「例年並みの漁獲量はあるが、新型コロナウイルス感染拡大によって外食業態での需要が減少し、豊洲市場など販売先の卸値が下がっていた中で、4月7日の緊急事態宣言の発出、さらに単価低下が進み、半値に近い状態になった」という。

漁業面では、本来なら高級魚として珍重されるキンメダイをメーンにした漁で浜も勢いを見せる時期だが、現在は特例的に週2回禁漁日を設けていることもあって、カツオ、キハダマグロなどの漁に移行する漁師もいれば、漁を控える漁師も出てきている。

三宅島では例年4月はバードウオッチング愛好者や釣り客、5月の連休はダイビングを楽しむ観光客で島内全体が活況を呈す。今年は村営施設のほとんどが臨時休館し、定期船などは運航しているものの、島からの移動も自粛要請が出ているため、工事作業者など外来者向けの宿泊施設などを除き営業活動をストップしている。

三宅村のホームページでは、6日現在の感染者はゼロだが、村営の診療所は1ヵ所しかなくPCR検査も行えない。医療施設も感染症を想定し整備されてはいないため島民の危機感は強い。島は高齢者も多く、感染者が出ると広がることも予測される。村民もマスク着用者が目立つ。

三宅島漁協は2019年9月に発生した台風15号によって定置網が被害を受けた。側張りの老朽化したところに台風の強大なエネルギーがかかり破損、定置網漁ができないでいる。19年から新規漁場候補地の調査(海底調査、潮流調査)と網の設計を行い、21年に操業再開を目指しているところ。

また三宅島漁協は、漁業者のグループである三宅島漁業集落と連携し、素材の風味と食感の良さが好評の「三宅島ドライマグロふりかけ」のシリーズ化を計画。同品は展示会で出会った食品専門バイヤーから味については高い評価を得たが、「単品では売りにくい」とのアドバイスがあった。そこで、三宅島漁協はアシタバ、島トウガラシを特徴としたシリーズ2商品を開発し、まずは首都圏に、続いて全国に販路を広げることを考えた。3月に東京都内で予定していた製造企業との打ち合わせが新型コロナウイルス感染の影響で不要不急の外出自粛となりキャンセル。4日政府が緊急事態宣言延長の発表を行い、小池百合子東京都知事が31日までの延長に言及したことで、商品開発の日程にさらに遅れが出ると危機感を強めている。(山田由紀子)

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