海外通信 外食ビジネスの新発想(54)先端を行く未来の食 植物ベースの料理に脚光
●新ライフスタイルを提案
常に料理界を先導してきたセレブシェフのマシュー・ケニー。「植物ベースこそが未来の食」と唱え、アメリカの大都市だけでなく、リマ、ドーハ、パームビーチ、ブエノスアイレス、ロンドンなど世界10ヵ国の都市に50店舗以上の植物ベースの料理店を展開している。
フラッグシップ・レストランは、カリフォルニア州のベニスにある「プラント・フード+ワイン」。同店が誇るのは、最小限にプロセスした洗練されたヘルシーな、今をときめく植物性ベースの料理だ。どれもこれもカラフルで、見目麗しく、クリエイティブな料理ばかり。チーズも乳製品ではなく、ナッツなどで作った植物ベースだ。高品質の食材を革新的なツールとテクニックを使い、夢を吹き込んで創作したという料理は、いったいどんな料理なのだろうか。
例えば、定番の「エアルームトマトとズッキーニのラザーニャ」。ラザーニャといえど、普通のラザーニャではない。実は、これはケニー氏が発案した初期のローフード(=加熱しない)料理の一つだ。リコタチーズは、マカデミアナッツやレモンの搾り汁、オリーブオイルを滑らかになるまでフードプロセッサーにかけて作る。もちろん、マリナーラソースも一から手作り。サンドライド・トマト、新鮮な生のトマト、バジルやシャロット、赤ピーマン、レモンの搾り汁、アガベ、オリーブオイルなどをブレンドして作る。ペスト(pesto)は、バジル、ホウレンソウ、ピスタチオなどをフードプロセッサーにかけて作る。ズッキーニとトマトのスライスに手作りリコタチーズ、ピスタチオのペスト、マリナーラソースを重ねていく。ケニー氏が以前オープンしたローフード・レストランのシグニチャー料理の一つになり、今でも世界各地の店で出している。
人気の「スパイシーウドン」も、日本のうどんとは見た目も味も全く異なる。汁は、昆布だしとヒヨコマメの味噌を使用。ゆで上げたうどんを、この汁とカシューナッツ、たまり醤油、メープルシロップ、米酢、ニンニク、ごま油などをブレンドしたホイシンソースと絡め、たまり醤油、米酢、アガベ、ごま油の漬け汁に漬けてから両面をこんがり焼いたテンペや、トーストしたカシューナッツ、たまり醤油や米酢、オリーブオイルで炒めたモヤシ、ラディッシュの薄切りなどを上にのせる。汁っぽくないユニークなうどんだ。
同店に来て注文すると、出てくるのが楽しみなメニューばかり。どれもユニークで独創的だ。ケニー氏は、ただ料理を提供するだけでなく、料理を含むライフスタイル全般を提案しているのだという。そもそも植物ベースということ自体が動物愛護、環境保全などを含む哲学を含んでいる。責任を持って、なおかつ、美しく、おいしく食べること–言うは易しいが、するには難しい食を同店は可能にしてくれる。もちろん、名前にある通り、ワインも充実。
「プラント・フード+ワイン」は、マイアミやペルーのリマにもあるが、東京にも開店を予定している。
●店舗情報
「プラント・フード+ワイン(Plant Food + Wine)」
所在地=1009 Abbot Kinney Blvd Venice California 90291