次なるブームを先読み! 外食カレーのトレンド予測

Komi'z「丸ごと玉ねぎカレー(淡路島産玉ねぎ)」800円(税込み) M~Lサイズの淡路島産玉ネギは、かなり食べ応えあり。ナイフとフォークでステーキのように切り分け、ばらしながら食べる。日販約20食
外食店におけるカレーのトレンドは、時代によって変化し続けている。ここ数年の潮流を見ても、スープカレーやスリランカカレー、スパイスカレー、出汁カレーと、さまざまなカテゴリーが登場し、新しい魅力を打ち出している。日本人のカレーに対する愛情は熱く、今後もカレー文化はますます多彩に拡大していくだろう。今号では次に注目されるであろうカレーのトレンド予測として、3つのキーワードに着目してみた。
◆具材オン ドカンと座る具材の強烈な存在感が光る!
カレーの上にドカンと座る玉ネギが強烈なインパクトだ。「Komi’z」のカレーは、数種のスパイスと玉ネギ、バナナなどを煮込んで作った誰もが好む王道のおいしさのルウに、思い切った具材をのせて魅力を爆上げしている。「一発で惹き付けられるようなわかりやすく、ほかにないカレーを作りたい」と同店の小美野隆大オーナーは考え、この大胆な盛り付けが誕生した。サラリーマンの多い土地柄から人気1位はカツカレーで、2位がこの「丸ごと玉ねぎカレー」。淡路島産玉ネギをコンソメで煮て、玉ネギ本来の甘さを生かしたあっさりとした薄味に仕上げている。
白ネギと青ネギ、塩ダレで和えた白ネギをたっぷりとのせた「大阪名物!ねぎカレー」もなかなか独創的だ。「ネギカレーは関西では割とよく見かけるけど、東京にはまだないので」(小美野オーナー)と、メニュー導入した。
ルウの中に入れるのではなくカレーの上に具材をのせる盛り付けは、不思議とどんな食材でもハマりやすい。同店でもこれまで、カツオのたたきや炙りサーモンなど、カレーには少し珍しい具材を組み合わせた期間限定メニューを多数展開しており、どれも評判は上々だったようだ。
さて、同店の名物「丸ごと玉ねぎカレー」だが、玉ネギが高騰している現状、小美野オーナーも「以前の倍ぐらいの価格になってしまって、かなり厳しいですよ」と明かす。一方で、この事情から波及し、玉ネギ高騰のニュースに絡めてメディア取材が相次いでいるそうで、「玉ねぎカレーはますます人気に火が付いてしまった。もうやめられないですね」と、小美野オーナーは苦笑する。
●店舗情報
「Komi’z」 東京都千代田区神田鍛冶町3-3-1 カリガネビル2階
◆のっけカレーは異色の具材で魅せる!
「ジャパニーズ スパイス カリー ワッカ」(東京・八丁堀)の「海鮮カレー」(2,000円、税込み)は、さらさらの出汁カレーにスパイス醤油を絡めた刺身をのせて大評判に/外食レストラン新聞21年12月号より
「カレーダイニング Chai(チャイ)」(東京・府中)の「肉肉肉カレー」(1,100円、税込み)は、バーナーで炙ったチャーシューをたっぷり/外食レストラン新聞19年9月号より
◆色で個性 ジャガイモムースにワザあり!五感で楽しむ真っ白な一皿
「KENASHIBA」は、北海道の農家出身のシェフが北海道の野菜にこだわったスープカレーを提供している。看板メニューのスープカレーも野菜が存在感を放つ逸品だが、「白いスープカレー」はさらに斬新。ふわふわの雪を思わせるカレーの上に素揚げ野菜を盛り付けた印象的な一皿だ。この雪のようなカレーは、ジャガイモ、生クリーム、泡立てたメレンゲをフードプロセッサーにかけたムース状のジャガイモをスープカレーの上にのせ、2層仕立てにしている。なめらかなジャガイモムースのやさしいコクはカレーの辛さをマイルドにし、スパイスと組み合わさった立体的な味わいが楽しめる。「見た目の魅力、野菜素揚げの食感と音、スパイスの風味、なめらかなムースなど、五感で味わうカレーです。ジャガイモムースとカレーの妙を楽しむなら、辛さレベルは激辛がおすすめ」と、同店を運営するFarchの中村亨社長は言う。
野菜をムース状にし、カレーの上にトッピングする発想はなかなか秀逸だ。2層仕立てのこの手法なら、既存のカレーをそのままアレンジでき、ふわふわなめらかな口当りが加わることでおいしさもアップする。さまざまな食材との組み合わせが広がりそうだ。
実際、同店でも6月には北海道池田町産つくねいものとろろを使った白いカレーを期間限定で展開しており、「北海道のカボチャを使ったり、レッドムーンという北海道産のジャガイモを使ったピンク色のカレーもメニュー開発中」(中村社長)と意欲的だ。
見た目のインパクトから「白いカレー」をメニュー展開している店は増えており、SNSなどでも頻繁に話題になっている。白だけでなく、色と付与される風味に個性を持たせたカレーのカラーバリエーションは今後、爆発的にブレイクするかもしれない。
●店舗情報
「スープカレーKENASHIBA(ケナシバ)」 東京都港区麻布十番1-3-5 クレイン麻布101
◆次世代のカレーは色彩で演出
食材の味と色を生かしたさまざまな個性派カレーが登場している。写真7は「soratobukaori」(大阪市西区)の「香ばし黒ゴマキーマカリー&さつまいもと生姜のスパイスポタージュ」と「甘辛牛しぐれカリー&ビーツのスパイスポタージュ」のダブル(1,300円、税込み)/外食レストラン新聞21年7月号より
◆中華カレー 広東料理の手法を取り入れた温故知新の味
外食店のカレーというと、西洋料理の流れを汲む欧風タイプ、本場インド風、キーマ、出汁カレーあたりが最近の主流だろう。これらのカテゴリーに、中華料理の発想を加えたタイプがあってもいいはずだが、「中華カレー」というのはまださほどメジャーではない。
しかし、明治22年創業の広東料理店「龍公亭」では、昭和初期からカレーライスをメニュー展開。数少ない中華料理店のカレーを見ると一般に、まかない料理から派生した裏メニューの雰囲気を持つ例が多いのだが、同店のカレーは「中華料理のカレー」として完成されている。女将の飯田公子社長によると「中国料理の調理手法を忠実に守りながらも、家庭料理としてのカレーを融合させた一皿」とか。注文が入ったら具材をごま油で炒め、昔ながらのエスビー食品の赤缶カレー粉と数種類のスパイスを加えて仕上げるという。強火で炒めたエビ、イカ、玉ネギ、ニンジン、椎茸、ピーマン、キクラゲ、タケノコなどの具材はシャキシャキとした食感で、ごま油が香り立つ。味わいは中華丼に近いが、カレーの風味がしっかりと染みている。かつて、付近の出版関係者たちが「深酒の疲れた胃に優しい」とこぞってこのカレーライスを食べに来たそうで、それがいつしか「知られざる名メニュー」として口コミで広がり、メディアなどにも取り上げられる名物の一皿になったという。
現在はランチでのみ販売しているが、注文があればディナーのコース料理の締めに特別メニューとして提供している。その特別感が、常連客にとってはたまらない魅力にもなっているようだ。
同店のカレーライスの完成度の高さを見ると、中華料理と融合した中華カレーというのは、まだバラエティー豊かに新開拓されそうな可能性を感じさせる。
●店舗情報
「龍公亭」 東京都新宿区神楽坂3-5
◆新欧風カレーも注目株!
カレー専門コンサルティング会社のカレー総合研究所では、今年のカレートレンドとして「新欧風カレー」に注目している。同研究所では、カレー粉やルウで作るスタンダードなカレーから進化を遂げた新タイプのカレーを「新欧風カレー」と定義。今年は西洋料理のカレーが日本に伝わってから、150周年の節目に当たる。「新欧風カレー」が、大きな盛り上がりを見せるかもしれない。
【写真説明】
写真3:さらさらの出汁カレーにスパイス醤油を絡めた刺身をのせて大評判に/外食レストラン新聞21年12月号より
写真6:強い粘りがあるつくねいものとろろをムース状にし、スープカレーの上にのせて提供(6月末までの期間限定メニュー)
写真7:写真は「soratobukaori」(大阪市西区)の「香ばし黒ゴマキーマカリー&さつまいもと生姜のスパイスポタージュ」と「甘辛牛しぐれカリー&ビーツのスパイスポタージュ」のダブル(1,300円、税込み)/外食レストラン新聞21年7月号より
写真8:料亭文化が根付く立地にあり、お座敷界隈や政財界の食通、文人に愛されてきた同店。女将によると、カレーライスは「近くの美容院に来た芸能人や政財界の方々が出前で注文したりと、さっと食べられることからも好まれていた」という
写真9:写真は「グリルアンドバー ハナヤ」(東京・新宿)の「上海角煮カレー」(1,100円、各税込み)と「四川麻婆カレー」(1,100円)/外食レストラン新聞22年4月号より