海外通信 外食ビジネスの新発想(55)世界の食材の行方 さまざまな代替食材が登場
●広まる植物ベース
コロナ禍の終焉の始まりが見えてきたこの夏、恒例の「ファンシーフードショー」が2年ぶりに開かれた。今回はイタリアがテーマ国だったことから、特にイタリアのメーカーの参加が多かったが、アンゴラのAからザンビアのZに至るまで世界各国から食品メーカーが参加して大いににぎわった。出展者の食品カテゴリーを見ると、プラントベース(植物ベース)、エコフレンドリー、エシカル(倫理的)、フェアトレード、グルテンフリー、ラクトースフリー、オーガニック、ヴィーガン、ベジタリアン、サステナブル、NON-GMOなど、食産業界の今を時めくキーフレーズがずらりと並んでいる。主催者によると、植物ベースや代替粉などのトレンドが今後も見込まれるという。
ビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズの代替肉はすでに市場に定着した感があるが、この分野では、ほかにもいろいろなメーカーがしのぎを削っている。「ヴィーガン(vegans)から雑食(omnivores)、そしてその間にいるすべての人に向けて植物ベースの食品を提供」とうたうアメリカのグッドキャッチフーズ社は、大豆、レンズ豆、エンドウ豆、インゲン豆などを材料に、ツナのほか、冷凍したままフライパンで揚げればいいだけのフィッシュフィレ、クラブケーキ、サーモンバーガーなどを製造販売している。動物由来の食材、人工香味料、合成着色料、ヤシ油などは一切使っておらず、100%ヴィーガンでありながら、見た目も味も本物そっくりということだ。外食産業向けにバルクも用意している。利用価値の高い便利な食材だ。
しかし、ベジタリアンの中には、本物の肉と味も食感も変わらない代替肉を食べることは偽善的だと感じている人もいる。ヨーロッパ市場の大手、ポーランドのソリグラーノ社は、ミックスに熱湯を注ぎ、よく混ぜて休ませてから成形し、フライパンで揚げるだけという画期的なバーガー商品を製造販売。ヒヨコ豆、スペルト小麦、雑穀、ビーツなどでできた植物ベースのバーガー7種類だが、中でも、スペルト麦にレッドペパーとリンシードをミックスしたベジバーガーは人気商品だそうだ。
一方、原材料をそのまま代替肉として使うことも始まった。ジャックフルーツは味がマイルドでいかようにも味付けできることや食感がチキンに似ていることから、ナゲットのほか、プルドポーク、タコスなどいろいろな料理に活用されている。タイのネイチャーズ・チャーム社は、バナナの花を魚のフライに、キノコをホタテ貝やカラマリ(イカ)として使うことを提唱、缶詰にして販売促進している。日本にも、代替として活用できそうな根菜や野菜がありそうだ。
乳製品に代わるノンデイリー製品の市場も、急速に広がってきている。オーツ、アーモンド、コメ、大豆のほか、マカデミアナッツ、ヘンプシード、フラックスシード、ゴジベリーなど耳新しいものも出てきている。また小麦粉に代わるオルタナティブ・フラワーも、バナナ(乾燥させたグリーンバナナ)、アマランス、ヒヨコ豆、ココナツ、タイガーナッツ、ソルガム、サンフラワーシード(ヒマワリの種)、カッサバなどさまざまなものが出回り始めている。
うま味を料理に加えるシーズニングや、水にフレーバーを付けるパウダーやリキッド、頭痛を起こすワインの成分を減らすリキッドなど、機能性食品も目に付いた。これから先、どんなトレンドが生まれるにしろ、選択肢がどんどん増え、ますます食材が豊かになっていくことは確かだ。
【写真説明】
写真3:おなじみの食品も数多く紹介されていた。フランスからも多くのメーカーが参加。1885年創業のジャケット社のフランス製クレープは、冷凍で12ヵ月、解凍してから30日間持つので利用しやすい。同社のワッフルはベルギー製。