トータルコスト低減に寄与「冷凍麺」 簡単、最高の品質で提供
種類の多い冷凍めんであるが、売り先別にみると、現在の売上高構成比は家庭用が約三三%、業務用が約六七%となっている。特に「冷凍ゆでめん」を中心に業務用での比率が高くなっているのが特徴的である(業務用市場として主だったところについては表3参照)。
これは「冷凍ゆでめん」が、業務用食材として適しており、導入すると以下に述べるような様々なメリットを享受できるからである(なお③~⑧については「冷凍生めん」と共通している)。
①最高の品質で提供できる‐洋の東西を問わず、めん類をおいしく食べる秘訣は、ゆで上げ直後に食べることといわれている。
この時のめんのおいしさ(シコシコした歯ごたえ)の秘密を科学的に解明し、おいしいゆで上げ直後の味を簡便に再現できるようにしたのが「冷凍ゆでめん」である。
②クイックサービスに最適である‐「冷凍ゆでめん」はゆで上げ後に冷凍されるので、解凍時間はうどんのように太いめんでも専用解凍釜でわずか六〇秒以内である。このため、客を待たせることがない。
③安全性・保存性(防腐性)に優れている‐冷凍めんは極めて衛生管理が行き届いた工場で製造されているので、安全である(「冷凍めん協議会」認定マークが選定の基準となる。認定マークにつき後述)。その上、保存するための添加物等を使わずに長期間保存できるので、安全性・保存性が抜群である。
④調理場をコンパクトにする‐冷凍めんの調理場は省スペースで運用できるため、調理場を有効に活用できる。
⑤無駄がない‐冷凍めんは必要な量だけを解凍するので無駄がなく、また、生ゴミが出ないので調理場を清潔に保てる。
⑥調理場のマニュアル化・システム化が図れる‐冷凍めんは定められマニュアルを守ることで、誰でも簡単にプロの味を提供できる。つまり、職人的な技術が不要であり、専門店以外でもプロの味の提供が可能となる。
⑦安定した品質のめんを提供できる‐冷凍めんは種類毎に調理方法等が決められているので、常に安定した品質のめんを提供できる。また、来客を見込んでゆで置きする必要がないので、めんが“ゆで伸び”することがなく、いつでもおいしい状態で提供することができる。
⑧メニューのバラエティ化が図れる‐うどん、日本そば、中華めん、スパゲティ等、多品種の製品を同一のシステムで導入できるので、メニューのバラエティ化が図れる。
以上のように、冷凍めんは数々の優れた特性をもっているので、トータルコストの低減にもつながり、業務用食材として人気が高い。このような冷凍めんを、よりおいしく、より衛生的に提供するため、一九八三年(昭和58年)に「冷凍めん協議会」が結成されている。同協議会では冷凍めん工場を、独自の厳しい基準に基づき審査し、定期的な製品検査も行い、良質で衛生的な冷凍めんを製造する工場を認定している。そして、そこで製造された冷凍めんに限り「RMK認定マーク」をつけているので、商品を見分ける際の目安とされたい。
このような冷凍めんは、大変デリケートな食品でもある。製造段階でいくら衛生的においしく製造されても、利用者の手にわたるまでの各流通段階で正しい取り扱いがされていなければ、その特性が損なわれてしまう。冷凍めんは製造された時から使用される時まで、一定した正しい温度(マイナス一八℃以下)で保管されていれば、約一年間は高品質状態を保つことができる。しかし、製造されてから品温がマイナス一八℃より上がったり、取り扱いが正しくなかった場合には、品質保持期間は当然短くなる。
例えば、一度解凍してしまった冷凍めんは、再び凍結させても決して元のようなおいしい冷凍めんにはならない。また、冷凍めんはもろいので、乱暴に取り扱うと折れてしまうので丁寧な取り扱いが必要となる。
さらに、外部からの臭いを吸収しやすいので、他の冷凍食品とは区別して保存することが望ましい。
次に、冷凍めんの解凍方法について触れてみよう。一般的に冷凍食品の解凍には、自然解凍が適しているといわれているが、冷凍めんには自然解凍は禁物である。これは自然解凍では“ゆでのび”が生じ、ゆで上げ後のおいしい状態が再現できなくなるからである。従って、特に「冷凍ゆでめん」の解凍は、たっぷりした熱湯で短時間に行われることが望ましい。「冷凍ゆでめん」の理想的な解凍時間は表4の通りである。
現在、注目を浴びている冷凍ゆでめんであるが、その歴史は浅い。生めん類を冷凍する技術は一九六〇年(昭和35年)頃から実用化されているが、現在の冷凍めんブームを支えている「冷凍ゆでめん」の技術が確立したのは一九七二年(昭和47年)で、ごく最近のことといえる。このように本格的な登場が遅かった冷凍めんは、①簡便性②保存性③本物志向等をキーワードに、業務用を中心に大幅な伸長を遂げてきた。
周知の通り、最近の外食産業を取り巻く環境は厳しさを増している。社会環境の変化を背景に若年層の労働意識は変化してきており、構造的ともいえる人手不足の問題は早急に解決しそうにない。また、地価高騰により、店舗の新規出店は難しくなってきている。さらに、競争激化により、他社との差別化を図る必要性が増大してきている。冷凍めんは、このような時代の要請に応え得る特性を有しており、今後も伸長し続けていくことであろう。
(冷凍めん協議会・豊田 実)