トップインタビュー アトム社長・佐々木正時氏 「外食は感動にあり」

1996.05.20 101号 3面

回転ずし「アトムボーイ」を軸に、すしと海鮮、うどん、とんかつ、カニ専門店の外食チェーン店を京都から関東、甲信エリアまでの幅広い地域で展開しているアトムグループ。

3月期の数字では店舗数二〇二店、売上高、直営一四〇億円、FC一〇五億円、合計二四五億円の大手外食企業を支える総師佐々木正時氏にチェーン展開の現状などを聞いた。(文責・楢橋)

‐‐最近、新店舗の出店が好調のようですが。

佐々木 私どもは大局的には外食産業の多角化を進めているわけですが、このなかで企業の柱としての回転ずし「アトムボーイ」、さらにはうどん専門の「えちぜん」、カニ専門の「蟹や徳兵衛」、とんかつ専門店「勝時」、すし海鮮専門店の「徳兵衛」という五つのコンセプトをもって事業を展開しているわけです。そのなかで、こんご二一世紀を越えていくためには回転ずし一本だけでは不可能だということなのです。

回転ずし市場は現在完全に定着して幅広いお客さまに認知されている。確かにブーム的な要素を呈している。しかし、こんごは必ず飽和状態になることが予測されている。現在すでに四〇〇〇店舗の市場規模で、月ベース三〇~四〇店が新規出店されている。

この流れが続けばここ四~五年先には六〇〇〇店舗ぐらいになるわけで、私どもの飽和状態とみる六五〇〇店になる前にさらなるコンセプトをつくりあげていく必要があるというわけです。

‐‐全体的に和食部門のチェーン展開にウエートが絞られているようですが。

佐々木 今、正に和食の時代であるわけです。和食が一般大衆に受け入れられている要素のなかには「ヘルシー」ということがあげられるわけです。和食はさらには季節感の強い料理が提供できる。当社では、こんご高齢化社会へ向け和食のもつ良さを強調して、とくに魚を切り口にして業態開発を進めているわけです。

‐‐五つのコンセプトがすべて和食を主体にして展開されている。

佐々木 その通りです。和食の多角化で業界の支持率を高めていきたいということです。これにより、業界ナンバーワンを目指す。やっぱり「アトムボーイ」だね、という印象、見た目でわかる、食べてわかる、具体的なこだわり、お客さまに本当においしいものを食べていただく、ということです。

私は外食産業は基本的には感動のビジネスだ、と思うのです。お客さまにいかに感動を与えるか、ということではないでしょうか。

私どもは大衆を相手にしていく商売ですから、日常食になり切らないといけない。繰返し繰返しお客さまに来店していただくためにはいかに満足をしていただくか、ということが第一条件にあげられるわけです。

‐‐お客さまとの接点が大きなキーポイントになるわけですね。

佐々木 そうです。そのためには店長の育成、教育という課題をさけては通れない。店長は根明かでなければいけない、明るい性格でお客さまに対して明るく接し、一人でも多くのお客さまにきていただける店づくり、これが大切です。店長の教育が各店の売上げ拡大に即つながるわけです。

‐‐こんごの展開について。

佐々木 常にわれわれは遠くに旗を立ててドミナント化していく、という基本方針があるわけです。私は福井から岐阜にきまして、現在、愛知県、名古屋にチェーンの本部をかまえたわけですが、現在、関東、甲信地区への出店比重を高めているところです。こんご外食産業は大競争時代に入っていくことは間違いのない現象である。このなかでパイの拡大が望めない、そのためにはパイを奪っていかなければいけない。パイを拡大させるためにはライバルから市場を奪っていかなければいけないわけです。

これからは回転ずしの近くに「えちぜん」、あるいはとんかつ専門店をもっていく、これにより関東市場の拡大をはかっていく計画です。

‐‐こんごの市場拡大は。

佐々木 確かに甲信、関東地区においては回転ずしのメッカといえるエリアだ。まだ出店するスペースはある。現在、競争時代に入っているとはいえ、本来の競争時代はこれからというところで、私としてはここ四~五年がひとつのヤマとみている。競合の少ないところへは積極的に出店し、競合の多いところへは異業態のチェーンを出店させるという戦略を展開していく計画にある。

‐‐大きなコンセプトに基づいて拡大しているアトムグループのチェーン展開に大いに期待しています。

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