デザート特集 飲食店の差別化戦略に役立てよう、CVS最新情報
「デザート需要はCVSに傾くばかり。飲食店(洋菓子店含む)のデザート需要はここ一〇年で三〇%も激減している」。ある業務用卸業者はこう嘆く。売れ筋絞り込みのラインアップで安価・手軽を訴求するCVSデザート。その勢いはとどまるところを知らない。
この強力なライバルに打ち勝つためにはCVSが絶対にまねのできない商品、つまり製品化(大量生産)が難しい特殊デザートの開発が必要だ。日持ちしない素材でフレッシュ感をアピールしたり、その場でしか食べられない盛り付け(すぐに溶けてしまうなど)を演出するなど、テーブルサービスを持つ飲食店ならではの創意工夫が必要といえる。
例えば、「カヌレ・ド・ボルドー」もそのひとつである。フランスの庶民的ケーキであるこのお菓子は、最近若い女性のあいだでブームとなっているが、製法と保存が難しくCVSでは製品化が不可能なため、各飲食店(洋菓子店)でアイテム化の機運が高まっている。
賞味期間が焼き上げてから三時間のうちに食べるのが好ましく保存しても二四時間程度。冷凍・冷蔵保存は不可能に近い。銅型を必需とし焼成にコツがいる。こうした条件は飲食店でなければクリアできないというわけだ。
ここでは、CVSに打ち勝つために必要なCVSデザート情報と、ブームを巻き起こしているカヌレ・ド・ボルドーを紹介する。
プリン、ヨーグルト系統の人気は不動。ケーキ類のラインアップ化が目立つところだ。これはデザート専門メーカーの躍進によるもの。
開発コンセプトには四つの傾向がある。(1)牛乳、アロエ、低糖低脂肪の健康志向(2)ビッグ、スーパー、三連パックをキャッチフレーズとする大容量の割安志向(3)プチ、ミニのおいしい物チョッと志向(4)三〇〇円前後の本物志向。
売れ筋のプライスゾーンは一〇〇~一五〇円。製品のネーミングについては「でかでか」「ふわふわ」などの分かりやすい形容が目立つ。主力のプリン系統は、ココア、いちごミルク、アップルなどにアレンジされる傾向がある。
若い女性の間でカヌレ・ド・ボルドーがはやっている。数年前にも一時話題となったが「なぜ今カヌレなのか」との専門家の声もある。
カヌレとは仏語で「みぞ」の意味。焼き型にみぞが付いているのが名前の由来。ボルドー独特の地方菓子で一六世紀ごろ、女性修道院で作られたもの。その中だけで食べられていたといわれているが、ヴィクトリア朝時代にはポピュラーなものだった。
フランスのカヌレ協会の認可を受けている日本でも数少ない店の一つ、パパ・ダニエル(東京都文京区、03・3813・2518)では、カヌレを四年前から販売している。当時は一日一〇個作っても四~五個しか売れなかった。ところが現在は一〇〇〇個を午前と午後に分けて製造販売しているが、店頭に出すとほんの二、三〇分で売り切れるというあまりの人気で一人一〇個に限定し、予約は受け付けていない。
カヌレの人気についてオーナーのダニエル氏は「外がカリッとして中はふんわりとした食感が新鮮であるほか、本場の味を体験した旅行者が増えていることがはやった原因だろう」と語っている。
つまるところ、カヌレ・ド・ボルドーが若い女性に支持された要因は、最近のデザートニーズの典型である食感、本物志向、目新しさのすべてを兼ね備えているからだと思われる。