地域ルポ 西新宿・小滝橋通り(東京・新宿) 学生街をバックに独自の飲食街(2)
笠置そばから僅か一〇mくらいのところ。表通りからはずれるが、信州・信濃「追分そば」が出店している。
日本橋、神田、新橋などのビジネス街に集中出店している「小諸そば」の“のれん分け店”で、三年前のオープン。立食スタイルの店だが、この店も昼食時を除けば、夕方まで客の入りはまばらといった状況だ。
小滝橋通りを挟んで笠置そばの真向かいに、特製牛丼「すき家」、その左隣にドトールコーヒーが軒を連ねている。
ドトールコーヒーは通りの先、北新宿の南端にも出店しているが、どちらもFC店だ。
この店はドトールコーヒー新宿小滝橋通り店。北新宿寄りは西新宿七丁目店。オープンは前者が昭和61年で、後者が三年前。
距離があるし人通りがあるところなのでバッティングすることはない。「一八〇円コーヒー」の安さと、気軽さが売りものなので、両店ともに客の切れ目がないという状況だ。
ドトールコーヒー小滝橋通り店から、大ガード交差点方向へ戻る。
二、三〇mいくと、大阪から東京市場に進出してきた牛丼とうどんの「なか卯」(本社大阪)、その先に天丼チェーンの「てんや」、立食タイプの「富士そば」などのチェーン店が展開している。
なか卯は平成6年11月のオープン、てんやは五年前、富士そばは出店して約一〇年。地域の発展とともに店数も増えてきているということだ。
牛丼チェーン「すき家」辺りまで引き返す。ここは前述のとおり三差路になっており、「すき家」の北側角地ビル一階にサンドイッチチェーン「サブウェイ」(西新宿店)が出店している。
この店もまだ新しく、二年前のオープン。FC店で店舗面積約二三坪、客席数一七席、このチェーンは、目の前で作るフレッシュサンドと店内焼のパンが特色で、若い女性層を主体に学生、サラリーマンが支持。
ツナ三九〇円、シーフード&クラブ四四〇円、サブウェイクラブ四九〇円、テリヤキチキン四三〇円が人気メニュー。客単価六〇〇円。
近接地のマックやモスに比べ客入りは少ない感じで売上げ主義より調理コストのかからない中身、収益力で勝負といったようだ。
表通りには大小のチェーン店が軒を連ねるといった状況だが、一本裏通りに入れば、感性の高いしゃれた店も点在する。
とくに青梅街道寄りにはそういった店が目立つ。ビストロ=地中海料理と地酒・ワイン「南欧台所」((株)バンカ=本社新宿)は今年1月開店、角地ビルの一階。二五坪、五〇席の中型店だが、オープンテラス風に通り側が全開放できる造りで、客席フロアが広く見える。
南フランスの料理をベースに前菜、オードブル、肉、魚料理を提供するが、客単価は二八〇〇円くらいと安い。客層は二〇~三〇代を中心としたサラリーマンやOL。青梅街道を渡った超高層ビル街のホワイトカラーたちもやってくるということだ。月商七〇〇~八〇〇万円。
弁当(六〇〇円)売りもやっている。この貢献度は高い。昼は三〇分で一七〇食くらいは売切る。このエリアは基本的にビジネス街なので、ランチ客をどう吸引するかが、経営の大きなポイントのようだ。
この店の右隣ビル一階にも雰囲気のある店が出店している。店の看板に串焼き・大皿料理「玄菜」とある。
平成6年9月開店。三三坪、六〇席。備長炭で焼く本格的な炭火串焼き料理も出すが、にくじゃが、フロフキ大根といった手づくりの大皿料理も提供している。
酒も地酒を揃えて、個性的な運営形態をアピールしている。客層は同じくサラリーマンやOLが主体。客単価三〇〇〇~三五〇〇円。月商一〇〇〇万円はかたい。固定客五割。オープン二年で店の経営は大きく軌道にのっているという。
青梅街道から入ったところの「かっぺ亭」(高繁商事グループ=本社新宿)も大皿料理と地酒の店だが、この店はいわばニュー感性ではなく、“オールドファッション”タイプの居酒屋だ。
店は八年前のオープン。地域の“老舗大皿料理”の店という存在だった。六〇坪、ビルの地下一階、一二〇席。客単価三〇〇〇~三二〇〇円。月商一三〇〇万円。これはおさえ気味の数字で、売上げはもっといくが、店の雰囲気が荒れ?サービスが雑にならないよう、客数をコントロールしている結果だという(大竹善男マネジャー)。
今年1月オープンのニューフェース。ビストロ「南欧台所」((株)バンカ直営)。しゃれた感じと気軽さで、20~30代のサラリーマン、OLを集客
「南欧台所」の右隣り。平成6年9月オープン。備長炭の串焼き、手づくり大皿料理と地酒が評判の「玄菜」は、固定客5割をつかむ