飲食店成功の知恵(101)繁盛編 女性客に目を向けよう

1996.12.02 116号 16面

これからは、女性客がますます大切になる時代である。

例えば住宅地。この立地にはかなりの外食需要が眠っている。最近はそのことに気付くお店が増えて、住宅地への出店が目立つようになってきているが、この立地では、主婦をはじめとする女性客に嫌われたら繁盛はむずかしい。それは、お店選びの主導権を主婦が握っているからだ。そしてこれは程度の差こそあれ他の立地にも共通していえることである。

一般に、女性が好むお店ということは、雰囲気がいいということである。だから、だれもが安心して入れるお店として認知される。また、お値打ち感に敏感な女性客が支持するということにも、大きな意味がある。つまり、女性客に好かれるということは、幅広い客層に好かれるための大事な条件なのである。

例えば、今は女性客が入ってくれなければ成り立たないといっていいくらいなのが居酒屋。かつては中年男の酔っ払う場所だったのに、すっかり様変わりしている。その理由はいろいろあるだろうが、一番の要因は、女性客が安心して利用できるようになったことにある。

また最近は、日本そばがちょっとしたブームになっているが、これも女性客抜きには語れない現象である。もちろん、そばはもともと日本人の生活に密着した伝統食だし、非常にヘルシーな食べ物でもある。だから、これからの高齢化社会のニーズとしても注目されているわけだが、それだけでは今のブームは考えられない。

現に、おいしいと評判のそば店はみんな、女性客でにぎわっている。居酒屋と同様に、かつては男性客が中心だったそば店の雰囲気が、すっかり変わってしまっている。当然、変化はメニューにも如実に現れている。保守的な業種の最右翼だったそば店で、女性客のハートをくすぐるような創作メニューが次々と開発されているのである。もちろん、そういう先見的なそば店はまだまだ少数派かもしれないが、時代の流れは確実にそちらの方向に向かっている。

ところで、今女性客はお値打ち感に敏感だといったが、このことをいまだに誤解している人が多い。つまり、女性客の財布のひもは固い、と思い込んでいるのだが、必ずしもそうではない。

たしかに、女性客のお店選びの評価は非常にシビアではある。好き嫌いがはっきりしている。しかし、特に若い女性の場合、消費単価は意外と高いのである。どうしてかというと、お値打ち感の感じ方が多分に情緒的だからだ。単純な金額の比較ではなく、その場の気分や雰囲気で評価する傾向が強いためである。しかも、女性客は「私だけのお店」を求める傾向も強いうえに、そのためならわざわざ遠くまで行くことをいとわない。つまりは、それだけ固定客化しやすいということである。

いずれにしろ、ここで大事なのは、だれもが入りたくなるお店になるということはそのまま、幅広いお客に愛される飲食店の条件だということだ。当たり前のことなのだが、ふつうはそのことがなかなか見えてこない。ところが、女性客に目を向けることで今、どういうお店づくりが求められているのかが自然と分かってくる。

例えば、女性客は何より不潔なお店を嫌うが、飲食店であれば清潔感を磨き上げるのは当然のことだ。また、女性客は「大事にされたい」という欲求が強いから、気に入られるためにはきめの細かいサービスが不可欠だが、これも本来の飲食店の義務である。

どうすれば女性客が満足してくれるか。この視点で考えていけば、おのずと繁盛は近づいてくるのである。

フードサービスコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

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