トップインタビュー 日本シェーキーズ・代表取締役 高橋剛氏

1996.12.16 117号 4面

‐‐いぜん続く低価格志向をどのように捉えているか。また、それに基づいて「シェーキーズ」ではいかなる策を講じているか。

高橋 低価格志向は続いているものの客単価の低下には歯止めがかかった。現状の客単価でどのような付加価値を付けて行くかが今後の課題だ。

ピザに関していえば、トッピングやネーミングのアイデアが各チェーンともに頭打ちで、ユーザーはベースであるクラストとソースの見直しとそれを軸とする新商品開発を訴求し始めている。なかでもパンクラストの飽き離れとクリスピークラストの志向高揚が顕著だ。

クリスピーピザチェーンの草分けを標榜する当社としては、このユーザーニーズに応えるべく、売り物であるクリスピークラストのさらなる品質向上に努めている。

現在、サクサク感を高めてソースをマイルドにしたニュークラストを開発中で、早ければ来春にも披露する予定だ。

‐‐店舗開発、業態開発、出店計画については。

高橋 立地条件に見合うコンセプトで既存店のリニューアルを進めている。画一的なチェーンイメージを払拭しオリジナリティーを色濃く打ち出すものだ。

最近の例では池袋店。好立地の同店ではセルフサービスを改めフルサービスを採用、FFからレストランへ転換した。またサイドアラカルトを二〇アイテムほど追加した。ミドル階級を意識したハイグレード展開で客単価を引き上げ、レストラン化で「シェーキーズ」のブランドバリューを広くPRすることが狙いだ。

いずれにせよ、業種業態の壁が崩壊したいま、ピザ一辺倒でユーザーを魅了するのは困難。これからは地域に密着し、それぞれに見合う食シーンを提案しなければならない。そのためにはサイドアラカルトの充実と店舗の個性化が欠かせない。

また、アフター5の集客策もポイント。既存店ではカクテルアイテムをラインアップしアフター5の居酒屋ニーズに備えているが、今後はピザとサイドアラカルト、それにアルコールをミックスした“ピザカ屋”なんて業態を作れたら面白いと思う。

ともかく、当面はリニューアルを軸に各店舗のオリジナル化を進める方針。新規出店は年間八店舗ペースに加速させ、二〇〇〇年をメドに一〇〇店舗体制を急ぐ。

‐‐各店舗のオリジナル化は地域ニーズの対応にこそ効果はあれ、半面には従来のマニュアルやオペレーションを崩しかねない懸念もある。チェーンオペレーションに慣れ親しんでいる「シェーキーズ」にとっては、サイドアラカルトの充実策についても調理オペレーションや食材調達に疑問符がつく。店舗のオリジナル展開にソフトランディングするための具体策はありますか。

高橋 キリン外食グループの組織力をフル活用する。キリン外食グループは当社のほか「キリンシティー」など五社を数えるが、昨年来からグループが結束して食材仕入れ、物流を一本化しスケールメリットを追求する方針を固めた。

展開ノウハウについても相互で情報交換を進める協調路線を確認し合った。キリン外食グループには、和・洋・中を始めとする各業種業態のスペシャリストが揃っており、「シェーキーズ」になかったノウハウを享受する体制は万全である。

すでに今年からそのシステムを活用、グループ他社の協力により調理技術、マネージメント、サービスを高めるための社員研修や個別指導を取り入れた。したがってソフトランディングに関する懸念は皆無である。

もとより当社には生え抜きの人材が多く、なかでも「シェーキーズ」に愛着を持った学生アルバイトからの社員登用率が高い。マニュアルに基づく店舗マネジメントだけでなく、店舗プロデュースまでもこなす能力が個々人に備わっていると評価している。各社員の手腕に期待するところだ。

‐‐一層の飛躍を見込む「シェーキーズ」の今後の展開におけるキーワードは何ですか。

高橋 当社の社員のあいだで叫ばれている“デフォルメ”を挙げたい。「シェーキーズ」“らしさ”をどのように強調、訴求して行くかが課題というわけだ。

前述通り外食産業では業種業態の壁が崩壊しつつある。とくに最近はピザ店、パスタ店、イタリアンレストランの出店が目覚ましい。ピザ専門店の草分けとはいえ影響を受けるのは必至。「シェーキーズ」の元祖的イメージを前面に打ち出した専門店イメージの強化策が急務といえるだろう。

すなわち、キーワードは“デフォルメ”なのだ。「シェーキーズ」のストアブランドを研ぎすますデフォルメ策を、今後はさらに具体化する意向だ。

‐‐これからの活躍を期待します。ありがとうございました。

新潟県生まれ。五六歳。慶應義塾大学卒業後、キリンビール入社。キリンシーグラム常務取締役など経て平成7年度、日本シェーキーズ代表取締役に就任。「シェーキーズ」各店のオリジナル化構想、キリン外食グループとの協調路線など新機軸を矢継ぎ早に打ち出す行動派。次世代の外食シーンをいち早くにらみ、ストアブランドのリニューアルに奔走する忙しい毎日だ。

(文責・岡安)

◇日本シェーキーズ(株)=米国カリフォルニア州サクラメントで生まれたシェーキーズが日本に上陸したのは昭和48年。三菱商事、キリンビール、シェーキーズ・インターナショナルの共同出資で、日本シェーキーズとして設立された。セルフサービス、オープンキッチンなど、アメリカのノウハウをそのまま導入した画期的システム、明るく楽しい雰囲気、パリッとした生地にスパイシーソースを使ったアメリカンタイプの薄焼きピザが人気を集め、日本のピザレストランチェーンの草分けとなる。後、ブームとなったデリバリーピザ市場にも参入。

店舗展開は平成8年末で直営二五店、FC四九店の計八四店。平成7年度売上げは九三億六二〇〇万円。

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