オーストラリア牛肉 タグに牛の戸籍・生育情報、輸出に認定マーク必要
〈フィードロット〉「全国肥育場認定制度」=日本市場で人気の高いグレインフェッド(穀物肥育)の場合、牧草地である程度まで育った肉牛はフィードロットと呼ばれる集中肥育場に移される。ここでは肥育飼料の成分や肥育期間、素牛重量などのマニュアルを設定し、肥育牛の健康管理と生産コントロールが行われる。また飼料・水質の安全性のチェック、獣医薬品に関する規制・監視、農薬や重金属の残留検査などを実施。輸出は認定マークのある肥育場から出荷されたことを示す証明書が必要。
肥育されている牛の耳にはイヤリングのように数種のタグが付いている。「これらはすべて牛の戸籍や成育につながる情報である。餌の穀物も出荷者証明で使用農薬や残留農薬がわかるようになっている。嘘の申請が判明したときには罰金や刑もある」(AMHビーフシティ工場のフィードロットにて)。
〈と畜・加工処理〉「豪検疫検査局“AQIS”検査プログラム」「農林資源局“BRR”」「食肉畜産統一基準局“AUS‐MEAT”品質保証・評価プログラム」=牛肉のと畜・加工処理段階では政府機関とオズ・ミートにより、多角的に品質検査を実施。基本的検査項目は(1)始業前の工場衛生検査(2)と畜前の生体検査(3)枝肉検査=農薬残留検査(4)同=抗生物質検査(5)同=その他の残留物検査(6)頭部及び内臓検査(7)部分肉検査。
チェック項目に網羅される有害物質は一〇〇種以上。すべての検査を受け安全が確認された製品だけが工場に在住するAQISの検査官から「衛生証明書」となる印を押され、加工処理される。
トータルクォリティーマネジメントのデモ工場であるティーズ・ブラザーズ(株)では「と畜段階で汚染の原因が肛門と食道の二つ考えられる。そのため、と畜前の気絶した段階で牛の食道の中にプラグを入れ、と畜して除血する時に食道にクリップを付けて二重で摂取したものの逆流を防ぐ。肛門はと畜して皮を剥ぐ段階でビニール袋にいれ縛る」。
「HACCPは二年前に導入しました。品質保証は加工のすべての工程で二時間ごとに検査を行う自社の品質保証官と、AQISの検査官の二重で行われています。HACCPが軌道に乗っているかどうかを確認するモニタリングでは大変良好です」とHACCP導入によって従業員の意識も高まり、安定した品質管理が定着、自社商品の信頼度はますます高まって競争力を付けていることをマーケティングマネジャーのエリック氏は語っている。
また、品質面ではオズ・ミート認定の品質評価人が「牛肉の品質と歩留まりに関する評価制度」に沿って脂肪色、肉色、脂肪交雑など、重要項目に基づいて品質チェックする。
これに加え新たに、日本向けの品質評価制度としてVSSが開発された。オズ・ミートの品質チェックをベースに脂肪交雑、肉色、脂肪色から、グレインフッド三種、グラスフェッド二種の五つの等級に分類するもので、正確かつ客観的な品質評価が成され、カートンボックスに貼り付けられるラベルで表記して一目で判別できるようにした。その品質はオズ・ミートが保証する。
〈コンテナ輸送〉=と畜して加工処理してコンテナ積めまで二~三日。日本向け牛肉が最も多く船積みされるブリスベンから横浜まで二週間くらい。横浜で各種検査、通関を通ってと畜から二二日~二三日で日本に到着する。
「梱包された製品はコンテナに入るまでの一日~二日ぐらいの間、アルミの鉄板の中を冷凍液が流れているプレートフリーザーで急速冷却される。性菌が繁殖する温度を一刻も早く遮断するための対策である」(ニッポンハム・オーキー)
同社ではこの冷却保管庫をコンピュータ管理で先入れ先出しできるシステムを導入、保管庫内からマイナス一度~〇度の温度帯を保つコンテナに製品を搬送。横浜までこの温度帯で管理される。その間に牛肉は食べごろに熟成する。
駆け足で豪の牧場からコンテナまでを紹介した。今、豪では若い女性を中心に牛肉の「アイアンキャンペーン」が注目を浴びている。牛肉は鉄分が多く、しかも吸収がよく、一緒に食べる野菜やパンなど他の素材の鉄分吸収も促す。AMLCのベロニーク女史は「同じ鉄分を摂取するための量は上が牛肉、下がホウレンソウ。牛肉を上手に使ってヒットメニューを開発して」と本紙読者にメッセージを送ってくれた。
オーストラリアは安全はもとより品質の向上にも注力、科学に裏打ちされた安全でおいしい牛肉生産に国を挙げて取り組んでいる。
(問い合わせ先=AMLCオーストラリア食肉畜産公社、03・3435・5785)