今年はこうなる業種別業態別展望 ファストフード=マックの独走阻止が課題

1997.01.20 119号 7面

一口にファストフードといっても、その業態は多様だ。ハンバーガー、フライドチキン、ドーナツは米国から上陸してきたその代表的なものだが、牛丼、天丼、カツ丼、うな丼などは和食系のファストフードだ。

ファストフードの代表格ハンバーガーは、マクドナルドをトップにモスバーガー、ロッテリア、ファーストキッチン、ウエンディーズ、明治サンテオレ、森永ラブなどとチェーン企業が乱立するが、昨年はマクドナルドの「八〇円バーガー」に象徴される低価格戦略と大量出店の攻勢を受けて、業界マップが大きく様変わった。

ハンバーガーチェーンの第二番手はモスバーガーだが、ここの出店数はマクドナルドの一四七九店(九五年12月期)に対し、一三八八店(九六年3月期)。またチェーン数三番手のロッテリアは五七七店(九六年1月期)。

マックとモスは出店規模においては拮抗する状況にあるが、しかし、これもマックの月間平均四〇店という大量出店で、大きく突き離される様相を呈してきている。

ハンバーガー業界ナンバーツーのモスバーガーが、マクドナルドに水を開けられるのなら、ロッテリア以下のチェーンはなおさらのこと、その格差は広がる一方だ。

創業二五周年の記念事業として実施したマックの「八〇円バーガー」は、定番商品二一〇円を四割近くも値下げしたメニュー価格で、この低価格政策でマクドナルドは他社に強烈なパンチを喰らわせることになった。

マックの低価格政策は、九五年にも定番八品目を三~四割のディスカウントで業界にインパクトを与えており、これ以降同チェーンの低価格攻勢は他社の追従を許さない決定打となって、強い集客力を発揮し続けている。

九六年12月期は店舗数二〇〇〇店、売上高三〇〇〇億円の実績。出店数で対前年比三割、売上げで二割アップ。“マックの独り勝ち”というのは、ハンバーガー業界共通の認識だが、この流れは九七年も続きそうで、マックのパワフルな市場戦略を阻止することはできそうにない。

マックの藤田田社長は、西暦二〇〇〇年を目標に店舗数五〇〇〇店、年商五〇〇〇億円の強気の企業戦略を打ち出しており、他チェーンとの格差は広がる一方で、マックの出店攻勢は止まらない。

大量出店、大規模チェーンに支えられるバイイング機能の優位性。本部マネージメントや店舗オペレーションがどこまで円滑に推移するか、不確定だが、マックの低価格政策に対抗するのは厳しい状況だ。

ハンバーガー業界ナンバーツーのモスバーガーは、日本人のし好にフィットさせた醤油味の「テリヤキバーガー」や、手づくり、ヘルシー志向、ハートフルな店舗オペレーションで、独自のマーケットを拡大してきたが、九六年9月の中間決算(売上高三〇四億三〇〇〇万円)は、創業以来初の減収減益という結果だ。

狂牛病やO157による外食離れの影響もあったが、マックの出店攻勢と低価格戦略で、集客力がダウンしたのも大きく響いた(モスバーガー本部)。

モスバーガーは常に質的追求にこだわってきたハンバーガーチェーンだが、マックのシステム的で、アグレシブな出店戦略の前には市場後退を余儀なくされているということだ。

モスは「おいしいハンバーガー作り」に徹しているが、マックはドライなチェーン戦略とシステマチックな店舗オペレーションに企業エネルギーを投入する。

多くの消費者はそのチェーンブランドと商品の廉価さにバリューを求める。業界関係者には「所詮、ハンバーガーはオヤツ、子供のポケットマネーの価格で十分。モスは“料理”として捉え、“本物志向”にこだわり過ぎたのでは……」と話す人もいる。

ロッテリアは九六年12月、主力商品の「てりやきチキンバーガー」(二九〇円)を五割引きにしたほか、新商品「新男爵コロッケバーガー」(一六〇円)を投入して、マックに対抗した。

森永ラブは九六年6月、日本たばこ産業(JT)が取り組む新会社「バーガーキングジャパン」(本社/東京、籠橋雄二社長=米バーガーキングと資本提携)に三五店舗を譲渡。

ラブは現在一三店舗の営業で、今後のチェーン展開には消極的だ。バーガーキングは九六年8月末に東京・池袋に第一号店の出店を皮切りに、米国ノウハウの店舗を登場させており、譲渡の三五店舗をベースに、四、五年内にFC、直営合わせて一〇〇店、将来は四〇〇〇店とマクドナルドに肉迫していく考えだ。

マックの独り勝ちをどう阻止するか、質にこだわって応戦するか、それとも捨て身の低価格政策で対抗するか、九七年のハンバーガー業界の成り行きが注目される。

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