シリーズ・売れる惣菜 中国天ぷら 揚げ方いろいろ・味もさまざま

1997.01.20 119号 21面

中国料理は植物油を多用する。揚げ物の場合でも日本の天ぷらのように単純ではなく、バラエティーも多い。総称して炸菜類(ザーツァイレイ)と呼ぶ。炸とは揚げ物を意味し、油の使用量の多い時を指し、少量の時は煎(ヂェヌ)と呼び区別する。

揚げ方には五つの種類があり、味わいもそれぞれに異なる。一般的な中国天ぷらの特徴をみると‐‐

(1)材料に下味をつける。日本天ぷらにはあまりみられない手法である。

(2)衣は水を少なくし、よくかき混ぜる。カラッと、パリッとの揚げ味を重視する日本天ぷらとは全く異なる。

(3)揚げるとき、たっぷりの油で一度に揚げる。日本天ぷらは油の温度が下がらないように鍋の表面の半分ぐらいのタネを入れる。そして揚げ方も一六〇~一七〇度Cで、やや低温でゆっくりと揚げる。

種類をみると、清炸(チンザー)、乾炸(カンザー)、酥炸(スーザー)、軟炸(ルアンザー)、高麗炸(カオリーザー)となる。

(1)清炸は衣をつけずそのまま揚げるもので、唐揚げを指す。材料の持ち味を生かす揚げ方で、カラッとしている場合が多い。

雲呑の皮を半分に切って重ね、真ん中に切れ目を入れ、ねじりコンニャクの要領でカラッと揚げる。歯触りのよい揚げ物となる。

(2)乾炸は材料に下味をつけ、片栗粉や小麦粉などをつけて唐揚げ風に揚げる。材料の持ち味を生かした揚げ方である。

脆皮鶏(ツイピーチー)は、鶏肉のぶつ切りに塩の下味をつけ、さらに卵白をつけて表面全体に片栗粉をまぶす。低温で色よく揚げる。

揚げ油の中に鶏肉の大きいものから先に入れ、全部入れたら中火に。五~六分して揚がったら小さいものから先に取り出す。こわれそうにカラッと揚がった衣が身上である。

(3)酥炸は、衣の中にふくらし粉やラードなどを加えてサックリと揚げる。油が入っているので、口の中でクッキーを食べたときのようにサクサクした口当たりとなる。

酥炸冬茹(スウザートンクウ)は、椎茸に下味をつけておき、サクッとした衣で揚げた上品な料理である。干し椎茸を水で戻し、塩、砂糖、ショウガ汁、ラードの調味液につけ三〇分ほど強火で蒸す。これに卵、片栗粉をつけ、サッと揚げる。日本天ぷらにはない味わいである。そのほか、酥炸魚条(スウザーユイティアオ)は、白身の魚を揚げたもの。

(4)軟炸は衣をつけた揚げ物で、衣に卵白、片栗粉、ベーキングパウダーなどを加える。味の流れやすいものを包んで揚げるので、中身が柔らかく揚がる。

桂花魚(クイホワユイ)は、白身魚を用意。鶏肉を代用してもよい。酒、塩、刻みネギで下味をつけ、衣に小麦粉、上新粉を十分にまぜて衣とし、一七〇度Cで揚げる。そのほか、炸藕盒(ザーオーホ=レンコンのはさみ揚げ)も同じ要領である。

(5)高麗炸は、卵白をかたく泡立て、片栗粉、小麦粉を加えてフワッと揚げる。西洋のフリッターに似ている。

高麗蝦仁(カオリーシャーレン)は、処理したエビに酒を振りかけて下味をつけ、卵白をかたく泡立て、片栗粉、上新粉、塩などをサックリと混ぜ、一六〇度Cの温度でゆっくりと揚げる。雪のようにきれいに揚がるので、白雪揚げという別名を持つ。トマトケチャップがよくあう。そのほか、炸高麗香焦(ザーカオリーシャンヂャオ)は、バナナのフリッターで甘くて美味。

中国天ぷらは、新しい味としておいしい。これからの売れる惣菜として興味深い。要研究。

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