半径2~3キロの小さな商圏・宅配ピザ 「ドミノ・ピザ」30分以内で消費者キャッチ
ドミノ・ピザは、日本市場において最初にピザの宅配ビジネスを展開した企業として知られている。事業主体は㈱ワイ・ヒガ・コーポレーション(本社東京・千代田区)。一九八五年9月、米国最大の宅配ピザチェーンであるドミノ・ピザ(本社ミシガン州)とFC契約を交わし、日本での宅配ビジネスをスタートさせた。
この第一号店は東京・恵比寿(渋谷区)での展開で、今までの出前商法とは異なり、ハンバーガーなどのファーストフードの運営システムに似た出店形態で、イートイン主体の大手ピザチェーンをはじめ外食業界にも大きなインパクトを与えた。
とくに「できたてのピザを注文を受けてから三〇分以内にお届けする」というキャッチフレーズは、消費者の関心を強く捉えた。従来の出前商法では、時間のコントロールがなく、「もう出ます」式の商法がまかりとおっていた。客の方も出前とは時間が不確定なものだと諦めていた。
ドミノはそれをマニュアル化し、システム化して、ストアオペレーションのパッケージとして、日本での出店にも反映したのである。しかも、注文のピザが三〇分以内に届けられないときには、ピザ一個につき七〇〇円を割引きするというペナルティを課した。
消費者のピザニーズに加え、強くハートをつかんだのはいうまでもない。とくにスマートさとスピードを重んじるヤング層の関心を増幅させピザ需要を大きく喚起した。
この結果、オープン一、二カ月で目標を四〇%も上回る高水準の売上げをマーク。そして、その後の店舗(デリバリースポット)の展開も代々木上原、乃木坂、高輪、目白、碑文谷と順調に推移し、現在では直営出店で九二店舗をチェーン化するに至っている。
デリバリースポットの展開は、半径二㎞以内に住宅やオフィスが多く存在し、一日一〇〇~二〇〇件のオーダーが見込める場所としている。
一件当たりの消費単価は平均二三〇〇円。単純計算すると、日商二三万円から四六万円内の営業収益ということになる。営業シフトは住宅・オフィスが混在するところでは午前11時から深夜12時、住宅中心の地域は、午後4時から深夜12時までというツウーパターンの営業形態を採っている。
客がくるのを待つという農耕的な営業形態から、客がいる場所に打って出るという狩猟的な出店戦略であるので、地域に合わせての運営形態が可能になっている。デリバリーの大きな武器となっているスクーター(ジャイロ)は、一店舗平均一〇~一五台を配備しているが、常に安全運転を優先してのデリバリー活動だという。(ドミノ・ピザ東京本部)
ピザのサイズは、一〇インチと一四インチの二種であるが、トッピング(具)はダブルチーズをベースにペパロニ(サラミ)、エビ、イカ、ホタテフレーク、イタリアンソーセージ、ハム、ベーコン、マッシュルーム、ピーマン、オニオン、ブラックオリーブと一一種あり、好みのピザをチョイスすることができる。
ピザクラスト(生地)は、系列企業のJCフーズから供給し、店舗ごとに発酵させたものを使っており、冷凍ものは一切使っていない。生地は最近までうす手の「ドミノ・オリジナルピザ」だけだったが、今年春ごろからニュータイプの「ドミノ・パンピザ」を加え、多様なピザニーズに対応することになった。
価格はパンピザが一六〇〇~二三〇〇円、オリジナルピザが二〇〇〇~三四〇〇円、パンピザはアメリカタイプの商品で、ベイキングパン(焼皿)にクラストを厚めに延ばし、時間をかけてオーブンで焼き上げたもの。質感があり、ふっくらとしておいしい。