ビール評論家M・ジャクソンセミナーから マイケル・ジャクソン氏

1997.03.17 123号 15面

六〇〇〇年以前に自然発生的に誕生した歴史を持つビールであるが、メソポタミア文明の中で花を咲かせたビールは、ヨーロッパのチェコスロバキア、ベルギー、ドイツ、英国、アイルランドの諸国で独自な製法とともに受け継がれ、多くの人々に愛飲されてきた。そして約一五〇年前の産業革命がビール醸造および市場を大変革させた。

蒸気機関の発明は大企業を生み、大量生産が可能となり大量輸送も可能となった。ガラスも大量生産されるようになりビールの色を楽しむゴールデンタイプのラガービールが世界の主流となった。

今日も独自な特色を持つビールとして評価の高いベルギービールの歴史は古く一一世紀にまでさかのぼるが、現在、ベルギーにはビール醸造所が約五四〇(ビールメーカー一三〇社)もあり、代表的な種類としては「ランビック・ビール」「トラピスト・ビール」「修道院ビール」「ホワイト・ビール」「レッド・ビール」「ゴールデン・エール」「ベルギー・エール」など多彩で、脈々と受け継がれてきた伝統的なビール文化が健在しています。

ベルギービールだけでなくエールビールに代表される英国ビールや辛口のギネスなど個性的なビールの魅力が二〇年ほど前から再発見された形となり、世界各国でマイクロブルワリーが増設され、英国では一〇〇軒が二〇〇軒に増え、世界一のビール消費国であるアメリカでは五〇軒以下だったのに、あっという間に一〇〇〇軒以上になりました。

日本でも四社の寡占状況の中から新しい状況が生まれ地ビール事業への参入は既に八〇場を超えるまでになっています。

世界中でガブ飲みの風潮が薄れ個性的でおいしいビールを飲みたいとする消費者のニーズが盛り上がっています。日本でもこれらのニーズに的確に応えれば、新しいカテゴリーが拡大し定着すると思います。そのためには、絶対においしいビールでなくてはいけません。そして、一度たりと粗悪な製品を出してしまうと信用は失墜してしまいます。

新しい事業を推進するにあたっては、ビールを愛することはもちろん事業そのものの社会的な文化価値を提供するといった視点も持ち合わせていただきたい。そして成功の秘訣は優秀なブルワー(醸造技術者)を選ぶこと、同様に不可欠条件として食物科学・微生物学にも堪能なコンサルタントを持ち、あらゆる障害を乗り越えられる基盤を確立しておかなければなりません。

日本の業界は閉鎖的だと聞きますが、社会的な文化価値を有する事業を展開しているのだという意識の上に立ち、互いに情報交換し助け合い、共生の芽大きく伸ばしていただきたい。

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