世界の人気食材 「カキ」古代からの貴重な栄養源“海のミルク”
カキは世界各地で生食の状態で食べられている人気の高い食材である。これは養殖技術が確立していることによる。
貝塚から多くの殻が発見されているように、カキは原始時代から食べられていたと思われる。カキの養殖は古代ローマ時代にもみられ、中国ではさらに古い記録もみられる。現在では北はノルウェー、南はニュージーランドまで世界で養殖が盛んである。
現在、養殖されている主力は約一〇種類で、マガキ属かイタボガキ属である。マガキ属は日本とアメリカの太平洋岸で、ポルトガルカキはフランスおよびポルトガルで、東部カキはメキシコ湾とアメリカ東部海岸で、ボンベイカキはインドで、オーストラリアカキはオーストラリアとニュージーランドでとれるが、以上はすべてマガキ属。
イタボガキ属は日本近海で二五種知られ、日本のイタボガキとヨーロッパガキ、オリンピアガキがこれに入る。日本の養殖場として、松島湾、的矢湾、広島湾、有明海などが有名である。日本のカキは品質面で世界的に最も優れているといえよう。
カキは別名海のミルクと呼ばれるほど栄養価が高い。ビタミンA、B、Cやグリコーゲン、血糖を下げる物質を含んでいる。貧血には鉄と銅の摂取が必要であるが、カキには鉄ばかりでなく吸収のよい有機の銅も多くみられる。
またタウリンも多く血漿中のコレステロールを下げたり、血圧低下作用も期待できよう。その他マンガンやヨードなども豊富で病人食にも向いている。
貝類の中で最も柔らかい肉質を持っておりタンパク質も良質で消化も非常に良く、世界的に愛好者がみられ重要食材となっている。
カキをプランクトンの多い海域で養殖すると、一~三ヵ月程度でグリコーゲンが蓄積されておいしくなる。この作業を身入れと呼んでいる。フランスでは藻の多い海水池で身入れして緑色にしたカキを珍重している。
一般的に英語の月名にRのつかない月は食べてはいけないというが、これらの月はカキの産卵期と一致し、食中毒を起こすことを警戒しての言葉である。しかし、夏ガキと呼んで夏に賞味するイタボガキもみられる。カキの旬は12~1月にかけて寒さが一段と厳しくなるときが一番おいしい。
貝類の中でカキほど広い料理のバラエティーを持つものはない。欧米ではオードブルとして、片方の殻を取り除いたハーフシェルにして、レモンやタバスコソースをかけて生で食べている。パリなどにみる秋冬の風物詩でもある。
このほか、カキフライ、カキスープを始めコキールやチャウダーとしても人気が高い。またグラタンやホワイトソースあえもうまい。
和風では生食する酢ガキを始め、カキ鍋、味噌汁、土手鍋、カキ飯、焼きガキ、天ぷらなどに多くのファンがみられる。
また加工用として水煮、薫製の油漬けなどの缶詰加工にされたり、地方名産としてカキあめ、カキ味噌などがある。中華料理に欠かせないオイスターソース(カキ油)は、カキの煮汁からつくった一種の魚醤油である。料理にうまみとコクを与えるので人気上昇中である。
カキの品質の見分け方は、何よりも鮮度。その料理にあった粒を選ぶことが大切。小粒のカキはカキ飯や酢ガキに、大粒のカキは生食やフライに向いている。カキはレストランで高級料理とみられているが、同時に手軽に食べられる庶民の味の代表でもある。