世界の人気食材 「コショウ」 黒は肉、白は魚料理に

1997.04.07 124号 21面

コショウは古代ローマ時代から薬用として使用された金と同じ価格の貴重品。日本には江戸時代にオランダ人によって伝えられた。あらゆる料理に辛みと風味を添えるので利用範囲が極めて広い。

東洋産のコショウは、インドからラクダの隊商によってヨーロッパに伝えられ、マルコ・ポーロによって神秘のベールははがされた。そして国運をかけてこの争奪戦が始まった。ルネッサンスはコショウの利益によって始まったともいえよう。

ポルトガルのバスコ・ダ・ガマがインドに到着し、ゴアを中心にコショウの市場を支配。その後勢力をつけたイギリスが独占し、インドの西海岸のマラバルはコショウ海岸と呼ばれた。

コショウは季節風の吹くアジア熱帯地方が原産地。インド、スリランカ、インドネシア、マダガスカル、ブラジルと産地は拡大をみた。ツル性の多年草の実で、その果実は小さな球形で、直径は五~六㎜程度。熟すと赤くなる。

野ブドウのように総状につく。この実が未熟の青いうちに摘んだものがグリーンペッパー。黒・白コショウに比べて香りと辛みが強くフレッシュ感にあふれている。新鮮な魚介サラダやビネグレットソースに向く。

完熟一歩前の赤い皮つき果実を採って、いったん熱湯に浸してから天日に五日間ぐらい乾燥すると、皮がしわになって黒色に変わる。これが黒コショウである。

白コショウは完熟した果実を袋に入れ、一〇日ほど流水中に浸しアクを取り、外皮をむく。さらに果肉を洗って残った種子を乾燥させたものである。玄米と白米との差によく似ている。

香味は黒コショウの方が多く上等品とされている。粉末にして使用するが、コショウの刺激性の辛みは外皮に多く含まれているため、外皮を取り除いた白コショウは辛みの点で黒コショウの四分の一程度となる。

二つのコショウの使い分けは、辛みの強い黒コショウは肉料理に、香りのまろやかな白コショウは魚料理にといわれている。フランスを中心とするヨーロッパではほとんど白コショウが使われ、黒コショウの使用はまれ。アメリカでは圧倒的に黒コショウの人気が高く、白コショウはあまり使われていない。コショウの使い方をみれば国籍が分かるほどである。

コショウはピリッとした辛みと爽快な香りが特色である。なかでも香りが生命。味は市販されている粉末のびん入りでも十分であるが、香りの点では大差がみられる。コショウの粒をペパーミルで粉にひいた時が香りが高く、時間がたつにつれて急激に減少してゆく。

このほかポワブル・ロゼと呼ばれるピンクペパーがあるが、美しくバラ色をした実である。正しくはコショウの仲間ではなく、バラ科に属する花の種子で、メースのような甘い香りと、ジュニパーベリーのような松臭さが好まれ、最近使われるようになってきた。

コショウは病害に弱く豊凶の差が大きい。このため暴騰暴落する傾向がみられる。産地別ではインドは黒コショウの品質が優れ、インドネシアやマレーシアは黒・白ともに良質。ブラジルは生産が急増し黒が多く、アメリカ向けに輸出されている。

コショウは肉や魚の臭みを消し、香りづけにあらゆる料理に使用され、特に煮込み、スープ、焼き物、カレー、ハム・ソー、ドレッシング、ピクルスに欠かせない。刺激性を持つピペリンと呼ぶアルカロイドは、消化を助ける作用がある。人気度の高い洋風スパイスである。

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