世界の人気食材 「バジル」地中海食品ブームにのって

1997.04.21 125号 22面

地中海食品がブームである。そのひとつにバジルがある。バジルとは英語の読み方で、イタリアではバジリコ、フランス語でバジリク、日本語ではメボウキと呼ばれる。

シソ科の一年草のハーブで、熱帯アジアが原産地とみられ、熱帯アジア、アフリカ、太平洋諸島が原産地。ヨーロッパにはインド、中近東を経て陸路で伝えられた。比較的新しいハーブである。

インドではヒンズー教の神ビシュヌに捧げる植物として栽培され、ホーリー・バジル=聖なる草の別名も。バジルは、ばい菌で汚れた空気をきれいにするという信仰による。

イタリアでは、プロポーズする時にバジルの小枝を髪にさす習慣もみられ、フランスでは、窓辺にバジルの鉢を置いて観葉として楽しみながら虫よけにする風習もある。

バジルは暖かい地域の植物なので霜に弱く、気温の高くなる5月下旬から急に生長し、6月下旬から7月はじめに開花。花は白地に紫色の小さな花が茎の先につき、芽をうまくつむと潅木のように整枝することができる。

特性をみると、フランスでハーブの王様の別名を持つように、葉は甘い香りがしてかすかな辛みを持つ。シチュー、スープ、サラダ、ソースなどに使われるほか、豆の煮込みによく、トマトとよく合うのでピューレにも使われる。

トマトを多用するイタリアでは欠かせないハーブで、ピッツァをはじめスパゲティ、ホワイトソース、ソーセージ、ドレッシング、スープのほか、広く使われている。

製品のバジルは花の咲く直前の葉を乾燥させたものが最高で、秋に枯れるまで数回刈られるが、品質面ではやや劣る。スペイン産が香りの点で優れているが、フランス、イタリア、モロッコ、アメリカでも多くとれる。日本でも暖地で栽培されている。

バジルの製品には生葉と、葉を乾燥して粉末にしたもの、ペースト状にしたものがある。

生葉(乾燥品でもよい)の料理として人気の高いものに、ジェノバ風バジリコスパゲティがある。スパゲティを少しかためにゆで、バター(オリーブ油でもよい)をからめ、細かく刻んだバジルを加える。熱々を食べるのがポイントで、あっさりとした味の中にバジルの風味が楽しめる。売れ筋メニューとなろう。

バジルを原料とした調味料にペースト・ジノベーズがある。ジェノバ(イタリア)からプロバンス(フランス)にかけてみられ、地中海食品ブームのひとつともなっている。

バジルをベースにガーリック、オリーブ油、パルメザンチーズ、松の実、クルミをよくすりつぶし、濃いソースを作る。南仏ではピストゥ・ド・プロバンサルとも呼んでいる。

フランスではスープ、サラダなどに使用。イタリアではピザ、サラダのほかトレネット(スパゲティの一種)のソースとして用いている。

ペースト・ジノベーズは、缶詰やびん詰として日本でも入手することができる。新鮮な製品と比べて味の点でやや落ちる。

バジルの長所でもあり欠点ともみられるが、熱烈なファンを作るものの熱の冷めやすい場合もみられ、ブームになりやすく冷めやすい。

バジルは野菜ではピーマンとナスによく合う。肉料理でワイン、ガーリックと一緒に使うと引き立つ。ブロイラー料理にも向く。エビ料理、卵料理にもほろ苦さで効果的。

またバジルを使ってハーブビネガーにも使われ、酢がマイルドになり味が引き立つ。万能向きでバジルの人気はさらに高まると思われる。

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