いま絶好調のコンビニ弁当 常に自己革新、新商品導入で来店頻度維持

1997.06.02 128号 2面

CVSは店舗面積一〇〇㎡に、約二八〇〇アイテムの陳列を行っている。その中でお客の来店頻度が週二~三回と高いCVSでは、いつも代わり映えのしない同じ品揃えではお客が飽き、マンネリ化はそっぽを向かれる。

お客の購買心理を誘うには、いつ行っても売り場で新しい発見が得られる状態をつくり出す必要がある。それには、常に商品の新旧交代をダイナミックに展開して、ベストの商品が並ぶ最適な品揃えを実現するために、新商品の導入を積極的に行い、来店頻度を維持、向上させることを図っている。

CVSの利用客は、主力客層が独身男女であるが、最近では主婦や中高年齢層まで幅広い層におよび、外食など日常の家庭の食事まで利用が広がりつつある。食生活に占めるウエートがきわめて高くなっている。

ここでCVS最大手のセブン-イレブンにおける弁当の商品開発を取り上げることにする。

セブン-イレブンの弁当類は、戦略商品であり競合他社に対する最大の差別化の武器でもある。実際、全店の平均日販六八万七〇〇〇円のうち、弁当の売上げ構成比は九~一〇%を占めていると思われる、とすると、平均単価を五〇〇円に仮定した場合、一日一店当たり平均して一三七食前後の販売と推定される。弁当だけの売上げ数である。

セブン-イレブンが弁当類の一日三回納品体制をとっていることは、つとに知られるとおりである。一日三回生産し、三回配送しているのだ。その中で店舗では、チャンスロス(欠品)と、商品ロス(廃棄)の二つのロスを限りなく削減し、機会利益を追求して、売れ筋を常に品揃えするために、単品管理を最重点課題と位置づけて取り組んでいる。

例えばPOSデータから弁当が納品されて、陳列してある最後の一個がいつ売り切れたか、を時刻で読み取ることができる。このデータによって欠品している時間帯がつかめることにより、次の仮説発注に反映させているのだ。

また、弁当、おにぎり類の商品開発は、アウトソーシング(外部委託)で行われている。料理専門家グループに委嘱し、そのグループからメニュー提案を受け、日本デリカフーズ協同組合(非営利のベンダーによる協同組合組織)のリーダー企業が中心となり、試作品を開発する。その開発商品を専門家グループにフィードバックし試食してもらい、アンケートによる回答を得ている。

ここでCVSの弁当売り場を見てみると、一店舗当たりの品揃えアイテム数は、各チェーンともに一二アイテムから二〇アイテムの範囲で陳列され、その価格帯は、三八〇~六〇〇円までの幅で、ボリュームゾーンを四八〇円においている。

ただサンクスは、神田川俊郎氏が製作指導する弁当を九五年から投入し、今年も春に「春爛漫(らんまん)二段重」(八八〇円)を期間限定で販売している。タケノコ、菜の花など春の食材を売り物にし、一品ごとに味付けした一〇種以上のおかずを並べ、盛り付けにも配慮した人気商品である。

これまでコンビニ弁当を敬遠していた四〇代以上の中高年層の利用を促した。これは、コンビニ弁当五〇〇円の上限を打破した好例でもある。

各チェーンの弁当は、基本的にはシンプルな盛り合わせの中で、質にこだわり、飽きさせない工夫が込められているのが特徴である。

最終決定は、セブン-イレブン本部で、毎週行われる役員会で改めて試食し、改善すべき点を整理して市場に導入するかどうかが判断される。そこでは作り手の論理に迎合することなく、消費者の立場に立った商品チェックが行われ、「お客は何を望んでいるか」を常に研究し、絶え間ない商品開発を行っているのだ。

この一連の開発プロセスの中で、前述の協同組合は、品質・衛生管理、商品開発、共同購入・共同配送の三つの取り組みを柱としている。チェーン本部とベンダーとの“協働化”この製販同盟が、セブン-イレブンでいうところのチームマーチャンダイジングである。

開発された商品は、レシピをメーカー各社で共有化され、製造ベンダー間における同質の商品化を実現し、その情報は、春と秋の年二回開かれる商品展示会で加盟店オーナーに開示し、試食されている。

最近は、CVS業界も節目を迎えている。競争激化から、時間・距離の利便性に加えて品揃え・サービスの充実を競う時代に入っている。

弁当も、旬の商材を使った商品をリーズナブルな価格で、タイムリーに導入することに競争ポイントが置かれている。

内食、中食、外食をめぐる食の構造変化は価格、便利さ、健康、楽しさの四つの志向が要因として浮き彫りにされる。中食市場は、女性の社会進出やCVSの拡大を背景に、安さと手軽さが受けて市場は年々拡大している。

その中で消費者の意識の変化に、どう変化対応するかが企業にとっての市場を拡大する決め手となるだろう。それには、現状における自己否定を繰り返し、自己革新を続けることがキーワードとなるのである。

(コンサルタント研究所㈱メッセ21代表・石川久)

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