アジアのエスニック タイ、伝統の食習慣守る

1992.10.05 13号 4面

タイは日本の約一・五倍の国土。シャムと呼ばれていた王朝時代から現代にいたるまで、他国の支配を受けたことがないタイには、近代化以前の古い理念や慣習が他の東南アジア諸国より根強く生きつづけている。食生活でもその傾向は強い。

普通タイ料理と呼ばれるものは、中央部のヤャム料理か、華僑の潮州料理の強い影響を受けた、麺類を主体としたバンコク料理のいずれかを指すことが多い。

タイの食事は、東南アジアの他の国々と同様に、食事といえば、まず第一にご飯を食べること、おかずはそのご飯をおいしく食べるために工夫されている。

タイのご飯には二種類ある。北部や東北部ではコシキやセイロで蒸したモチ米を食べ、中部や南部では湯とり法で炊いたウルチ米を食べる。この二つの地域では、使われる調味料も異なり、料理全体にちがいがみられる。

中央部・南部のタイ料理は唐辛子、コショウ、カルダモン、シナモンなどのスパイスをたくさん使い、料理は辛くてスパイシー、ココナツミルクを入れる料理も多く、ほとんどの料理はナムプラー(魚醤・ユイジャン)とかカピ(蝦醤・シャジン)で味付けられる。首都バンコクでは、中国料理の影響を受けた肉まんじゅう、シューマイ、点心類や麺類などバンコク料理なるものがある。

北部、東北部タイの料理は一口にいえばあっさりしている。主に食塩か魚の塩辛で味付けする。魚の塩辛はご飯につけて食べる。東北タイの古都チェンマイには、その昔、北タイの賓客をむかえたとき、ちゃぶ台ほどの大きさの塗りの木膳いっぱいに料理を並べて出したという。それはカン・トーク・ディナーといわれ、今日では名物料理の一つとなっている。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら