絶対失敗しないための立地戦略(1) 細心の注意、外食は立地産業

1992.10.05 13号 15面

フードサービス(外食産業全般)は昔から“立地産業”といわれ、成功要因の七割は立地で決まってしまう‐‐といわれるほど“立地”は重要な要素。投資額としても最も比重が大きく、立地戦略に失敗した場合は決定的だ。

ところが専門バカというか、意外とこの“立地”を、勘だけに頼ったり、「安かったから」とか、単に「駅が近いから」‐‐といった不確定要素で決定している経営者(出店担当者)があまりにも多すぎるのであきれかえることがある。

筆者もかつて、大手外食産業で経営企画課長として直接数十店の出店に立ち合ったことがあるが、この頃はちょうど外食産業の勃興期であり、外資もほとんど上陸しておらず、ようやく外食が“企業”として体裁を整えはじめたばかりのこと。それなりの基準はあったものの、いまにして思えば、いきあたりばったり。この時の経験からすれば、こうした場合の店の成功する確率はわずかに50%。半分は失敗する。

何千万、時には何億という巨額な金額を投資するのに、これではあまりにもギャンブルでありすぎる。いまや情報化時代。溢れかえるこの情報を一定のキチンとしたルールのもとで「マーケティング立地戦略」として活用すれば、この成功確立要因は一挙に80~90%の高率になる。ほとんど失敗しないということだ。

独立して約二〇年、マーケティング立地を中心としたコンサルティングをはじめて以来、筆者はホテル、レストランを中心に、商業ビルまで含めると二百店余の物件を手がけたことになるが、基本的にはまったく失敗したことがない(なかには、当方のいうことを聞き入れてくれないケースがある)。

それだけ、キチッとしたマーケティング立地調査を行なえば、失敗しなくなる‐‐という好例だろう。

相談に訪ずれるケースのうち、約半分は“出店不可”というのが現状。それほど立地選定は難しい。

《立地要因が経 営要素の第一》 それに、日本の経営者はソフトに対する認識が甘すぎることも指摘しておきたい。もののハッキリ見えるハード(建築や内装、設計まで含めて)には、巨額な金額を平気で投資するくせに、ことこうした立地マーケティング調査には、わずかな金額を惜しむ。物件や入れ物ができてからの訂正は極めて困難であり、その前段階ならば、事は容易である。

バブル経済が崩壊したからといって、まだまだ土地は高値の高原状態であり、賃貸や権利譲渡、保証金なども高騰したままで、好立地ほどその傾向が強い。今後とも立地要因は、ますます重要な経営要素の一番の決め手になる。もはや、単なる経験と、勘と、感性で成功するほど外的要因は甘くない時代。それだけに、ぜひこの“立地”には、細心の注意と関心を持って欲しいもの。

プロに相談すれば良いのだが、この業界には人材がすくなく、中にはかなりいいかげんな内装業者や、不動産ブローカーと結託した悪徳業者も多いので注意したい。

そこで、今号からぜひこの「マーケティング立地戦略」の基本を、経営者や出店担当者に最低限理解していただくためにシリーズで、『絶対失敗しないためのマーケティング立地戦略』の基本ノウハウをお届けしてみたい。

マーケティング・コンサルタント 戸田 光雄

(㈱タック代表取締役)

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